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マウスピース矯正に使うマウスピースとはどんなもの? マウスピース矯正の注意点

2024.10.29

マウスピース矯正

歯並び

歯列矯正

こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をお読みいただき、心よりお礼申し上げます。

さて、最近数人の患者様から「先生、マウスピース矯正って、自分でマウスピースが外せるんですよね?」という内容のご質問をお受けしました。

「歯列矯正の1つであるマウスピース矯正は、ブラケットとワイヤーで歯を固定するワイヤー矯正と違って、取り外しが可能なので、自分の都合のいいときだけマウスピースを着けていればいい」と、やや安易に考えておられるようでした。

そこで今回は、マウスピース矯正の概要と、マウスピース矯正に用いられるマウスピース(アライナー)とはどのような矯正装置なのかについてご説明させていただきたいと思います。

なお、プレジールではマウスピース矯正を行っておりませんので、おすすめもせず否定的な立場もとらず、客観中立の立場から、歯科医としてのホンネをお話しさせていただきたいと思います。

マウスピース矯正とはどんな歯列矯正?

マウスピース矯正とは、歯列に「アライナー」と呼ばれる透明樹脂製のマウスピースを装着し、アライナーの弾性力にを利用して歯を移動させる歯列矯正法です。

人間の歯は、一定方向に力を加え続けることにより、1ヵ月あたりおよそ0.3ミリというゆっくりしたスピードで動いていきます。歯列矯正はこの現象を利用し、1~2年、あるいはそれ以上の期間にわたって矯正装置で歯に力を加え続け、歯並びを美しくすることを目標としています。

マウスピース矯正に使われるアライナーは、患者様の歯から型取りをし、現在の歯に対して、ほんの少し目標の方向に力を加えられるよう造型されます。そして、歯が移動するにつれて次々に新しいアライナーを製作し、少しずつ、無理なく歯を矯正していこうという考え方です。

このため、頻繁にアライナーを取り替える必要がありますが、次に説明するワイヤー矯正と比較すると、自分でアライナーを着け外しできる点や、自分で装着時間をコントロールできる点などのメリットがあります。

ただし、これらは確かに患者様の自由度という視点から見ると「メリット」といえますが、歯科医師の立場からすると、一概にメリットとはいえず、むしろ治療上のデメリットになる場合もあります。それはのちほど説明しましょう。

マウスピース矯正はワイヤー矯正とどう違う?

皆様の中には、歯に「ブラケット」という小さく四角いパーツを貼り、ブラケット同士をワイヤーでつなげたタイプの歯列矯正器具をご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。これが最もポピュラーな歯列矯正装置で、ブラケットとワイヤーによる歯列矯正を「ワイヤー矯正」といいます。

ワイヤー矯正は、近年は装置も小型になり、目立ちにくくなってきてはいるのですが、やはり装置を装着していると多少は目につきます。
また、同様の矯正装置を歯の裏(舌側)に装着して目立ちにくくさせる「裏側(舌側)矯正」という矯正方法もあるのですが、これは矯正装置が舌に近い場所にあるため、装置と舌がこすれてキズができたり、慣れるまで食事や会話が不便になったりといったリスクがあります。

また、ワイヤー矯正は固定式ですから、いったん装置を固定すると、患者様が自分で外すことはできません。この点が、裏側矯正も含むワイヤー矯正と、自分でアライナーを着脱できるマウスピース矯正の最大の違いといえるでしょう。

マウスピース矯正の注意点

歯列矯正は数年間という長期にわたって継続する治療です。その間、患者様の生活面の不自由や、装着によるストレスをいかに軽減できるかということは非常に重要な問題です。

実は、「ワイヤー矯正とマウスピース矯正のどちらが患者様にとって負担やストレスが小さいか」については、個人差が非常に大きく、一概にどちらのほうが優れているとはいえません。

例えば、ワイヤー矯正は口の中に複雑な形状の矯正装置が設置されるため、隅々までの歯磨きが難しく、虫歯や歯周病になりやすいといったリスクがあります。この点においては、歯磨きの際にアライナーが取り外せるマウスピース矯正に軍配が上がりそうです。

一方、マウスピースは歯全体がアライナーで覆われてしまうため、慣れるまでは不快に感じるという患者様もいらっしゃるようです。また、「マウスピース矯正はほかの矯正法よりも矯正期間が長めになりがち」という歯科医師もいます。

マウスピース矯正にもいろいろな種類があり、歯科医師によっては「矯正期間はほかの矯正法と比べて特に違いはない」という人もいるのですが、いずれにせよ、患者様が自分でマウスピースを外せてしまうため、「ついつい外している時間が長くなる→矯正の効果が低減する」といった問題が発生しやすく、医師のコントロールができにくいといった点はあると思います。
このため「患者様の生活態度によって矯正の終了期間が大きく左右される傾向があるため、治療まかせではなく患者様自身の治そうという強い意志が必要な治療方法です。
なお、歯列矯正は、歯を動かすために一定方向に力を加え続ける必要があります。これは、ワイヤー矯正もマウスピース矯正も同様で痛みの度合いは同程度であると考えられます。

マウスピース矯正が適さない歯並びもある

抜歯が必要な症例、例えば重度の叢生(らんぐい歯)の改善や、4mm以上の隙間の閉鎖などは、マウスピース矯正には向かないと言われています。
また、これはワイヤー矯正も同様なのですが、マウスピース矯正は歯列全体を覆う様にアライナーをはめる矯正法ですから、歯並びの一部を矯正する「部分矯正」には適していますが、歯列全体を前後させるような矯正や骨格性の矯正にはあまり向いていないと言われています。

患者様のモチベーション維持が重要!

さて、いかがだったでしょうか。確かに、マウスピース矯正にはワイヤー矯正にはない審美上のメリットや自由度の高さなどがありますが、こうしてワイヤー矯正との違いや、メリット・デメリットなどを見ていくと、一概に「メリットばかりの矯正法」とはいえないことがご理解いただけたと思います。

なお、アライナーの種類や矯正方法にもよりますが、マウスピース矯正法は「1日の大半を睡眠時間も含めてアライナーを装着したまま生活する」という強い意志と、数年間にわたって「歯並びを美しくしたい!」というモチベーションを持続させることが必要です。

こうした点を理解した上でほかの矯正法と比較・検討し、自分に最も適した矯正法をお選びいただければと思います。


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