皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読くださり、ありがとうございます。ここでは私・中村が、毎回ひとつのテーマについて、皆様のお口の美容と健康に関する話をお届けしています。
さて、今回のテーマは「歯列矯正で起こりうる歯のトラブル」です。歯科矯正は、矯正器具を使って歯に人工的に力を加え、少しずつ歯を動かしていくという治療法のことです。口内の環境を大きく変えるものですので、歯そのものや体にもさまざまな影響を及ぼすことがあります。矯正中の人の中には、なんとなくイライラする、微熱が続くなどの症状を訴える方もいらっしゃいます。歯列矯正によって起こる可能性のある歯や体のトラブルをまとめてご紹介します。
目次
歯列矯正中の代表的な症状とその原因・対策
歯列矯正が歯や体に影響を及ぼすケースは、装着した矯正器具に関連する問題に加え、実際に歯が動いていく過程での痛みや矯正後に発生するトラブルなどが考えられます。中でも、特に起きやすいものについてまとめました。
痛くてイライラする
歯列矯正は、弱い力で歯を移動させる治療法ですが、少なからず歯や歯茎に負担がかかるため痛むこともあります。痛みのレベルは人さまざまですが、痛くて眠れない、どことなく不快感があるなど、食事中だけ痛いなどがあげられます。特に矯正を始めて一週間程度は痛みが出やすく、咀嚼するだけで痛みを生じるので、イライラしてストレスになってしまいます。
疲労感が取れない、眠れないなどの不定愁訴
不定愁訴(ふていしゅうそ)とは、検査をしても原因がわからない不調全般を指す言葉です。「イライラする」「なんとなく体がだるい」「眠れない」「頭が重い」「めまいがする」など、症状は様々です。
このような不定愁訴は、嚙み合わせと深い関係があるといわれており、歯列矯正を行った結果、疲労感や不眠を訴える人もいます。
虫歯や歯周病になった(悪化した)
ワイヤーによる歯列矯正を始めると、虫歯や歯周病ができたり悪化したりする場合があります。ワイヤー矯正は、歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる小さな器具を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を引っ張るしくみですから、器具やワイヤーが邪魔になって歯の汚れが落としづらくなり、器具の周りに歯垢が溜まってしまうことがあります。
対策としては、通常の虫歯や歯周病予防と同様に、日々のブラッシングを丁寧に行うことが第一となります。うまく磨けない場合は、歯科医院で器具の定期調整を行った際に、歯科衛生士にアドバイスを求めてみるといいでしょう。また、取り外しが可能なマウスピース矯正を選ぶことによって、リスクを下げることができます。
すきっ歯になった
歯列矯正を行った結果、歯と歯のあいだに隙間が空いたり、隙間が広がったりする、いわゆる「すきっ歯」の状態になることがあります。おもな原因としては「治療計画段階での見通しが甘く、歯にかかる力を十分に考慮しないまま矯正してしまった」「抜歯により歯が並ぶスペースを作ったものの、うまく埋まらなかった」「舌癖やリテーナー(矯正で動かした歯を安定させるためにつける保定用器材)を正しく使用していないことなどが原因で、後戻りが起きてしまった」のいずれかであることが多いです。
対策は、十分な検査を行った上で「しっかりした治療計画を立ててくれる信頼できる歯科医院を選ぶ」ことが何より有効です。また、リテーナーの着用期間・着用時間をきちんと守ることも重要です。舌癖や習慣改善の必要性がある場合には、口腔筋機能療法(MFT)を受けることも検討してみてください。
歯の根が溶けた(歯根吸収)
歯列矯正では、矯正装置により歯に圧力をかけることで進行方向側の骨を溶かし、反対側の骨を作っていくという「骨の代謝」を利用して歯を動かしています。この際、大なり小なり骨と同様に歯の根そのものが溶かされ、吸収されて小さくなってしまうことがあります。
歯根吸収が起きる原因ははっきりとはわかっていませんが、早く歯を動かそうと、無理に強い圧力をかけたときに起こりやすいといわれています。対策としては「短期間で治療が完了!」などのうたい文句に惑わされず、きちんと「無理のない治療計画を立ててくれる歯科医院を選ぶ」ことが大切です。
歯が痛くて食事がとりづらくなった
歯列矯正中の歯は、骨の破壊と再生を繰り返しながら動いていくわけですから、どうしてもある程度の痛みが出ることは避けられません。もっとも、痛みの度合いには個人差があり、その強さには波があるため、矯正期間中ずっと痛みを感じるわけではありませんが、慣れないうちは痛みから食事がつらくなることがあります。また、不安やストレスがあると、痛みを強く感じやすいともいわれています。
この痛みを完全に防ぐことはできませんが、「ワイヤーから歯にかかる圧力を調整する」「マウスピース矯正を選ぶ」といった方法で痛みを軽減することが可能です。ただし、歯に加える圧力や矯正方法は、矯正にかかる期間にも影響を与えますので、メリット・デメリットをしっかり確認した上で選択しましょう。
頭痛や肩こり
頭痛や肩こり等は、元々噛み合わせが悪く不調になりやすい状態だった上に、「歯列矯正が引き金になった」「矯正治療が不十分で噛み合わせが改善されなかった」「噛み合わせは改善されたものの、習慣化した悪い舌癖や食べ方の癖による歪みが生じている」など、さまざまな原因が考えられます。対策としては、やはり審美面だけでなく噛み合わせや舌癖、食べ方にも注意して、適切な治療を行ってくれる歯科医院を選ぶことが大切になります。
信頼できる歯科医院をどう見つける?
歯列矯正にまつわるトラブルは、歯の痛みなどある程度仕方のないものもありますが、信頼できる歯科医院や自分の生活に合った治療方法を選ぶことで、予防できるものも少なくありません。歯科医院を選ぶ際には、メリットばかりでなくリスクについてもしっかり説明してくれるかどうか、質問にしっかり答えてくれるかどうかを基準に、信頼できる歯科医師をしっかり見極めることが第一です。治療計画の中で、疑問点や不安な点については事前に確認し、納得した上で治療を受けることが、結果的にトラブルの予防にもつながります。
歯列矯正による歯のトラブルは、起きる確率をゼロにすることはできませんが、きちんと対策をとることでリスクを減らすことはできます。ぜひ参考にしてみてください。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。