皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、ありがとうございます。
このコラムでは、患者様からのご質問や私のこれまでの経験を基に、素朴なお悩みから最新の話題まで、お口の美容と健康をテーマにお話しさせていただいています。この記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
さて、今回お話しするのは「テトラサイクリン歯のホワイトニングについて」です。
「テトラサイクリン」とは、なかなか聞きなれない言葉ですが、抗生物質の1グループの総称です。そして「テトラサイクリン歯」とは、テトラサイクリン系抗生物質を服用した副作用で、グレーや黄、暗紫色、オレンジなどに変色してしまった歯のことをいいます。
色が変わるだけですから歯の機能自体には問題ありませんが、どうしても目立ってしまいますので、プレジールでも「なんとか白くしたい!」とホワイトニングのご相談をいただくことがあります。読者の中にも同じ悩みをお持ちの方もいらっしゃると思いますので、このテーマを選ばせていただきました。
そもそも、「テトラサイクリン歯の変色はどのようなメカニズムになっているのか?」「ホワイトニングの効果はどれぐらい期待できるのか?」の2点について、審美歯科医師のホンネでお話しいたします。
目次
テトラサイクリン歯の原因と変色要因
昭和40年代に使用された「テトラサイクリン系抗生物質」が原因
テトラサイクリン歯の原因は、「テトラサイクリン系抗生物質」という薬です。
昭和40年代を中心に、「マイコプラズマ肺炎」や「百日咳」の特効薬として、また風邪薬のシロップなどに使われていました。しかし、歯の変色という副作用が報告され、この薬が効かない細菌が多くいることがわかったことなどから、現在では基本的に使われていません(ただし、「危険性を上回る有益性がある」と判断された場合に限り、今でも使用されることがあるようです)。
テトラサイクリン歯は、母親のおなかの中にいるときや授乳期、永久歯の形成期(出生直後~8歳頃まで)のあいだに、テトラサイクリン系抗生物質を大量に投与されることで発生します。そのため、薬が盛んに使われていた昭和40年代頃に幼少期を過ごした「40~50代」の方が悩まれていることが多いようです。
テトラサイクリン歯の変色要因
テトラサイクリンは、鉄や亜鉛、カルシウムと結合しやすいという性質があるため、形成中の歯に含まれるカルシウムと結び付き、象牙質の中に沈着します。沈着した物質は、紫外線にあたると光化学反応(物質が光を吸収して化学反応を起こすこと)により色が変わるため、太陽光線があたることで歯の色が変化してしまうのです。そして、紫外線の量によって、黄色から褐色を経て、徐々に濃い色へと変化する特徴もあります。そのため、最も光があたりやすい前歯の色が濃くなりがちで、色の違いが目立ってしまうことが多いのです。
テトラサイクリン歯でよく見られる色は、グレー系、イエロー系、暗紫色、ブラウン系ですが、変色の度合いは抗生物質を投与された期間によって異なり、色の変化が表れる位置も投与された時期によって異なります。前歯から6歳臼歯(乳歯の奥歯のすぐ後ろに生えてくる永久歯)に向かって左右対称に表れるのも特徴のひとつです。左右対称の縞が見られることが多いです。
テトラサイクリン歯でお悩みの方
テトラサイクリン歯の症例集
ホワイトニングで必ずしも白くなるとは限らない
では、このようなテトラサイクリン歯にホワイトニングの効果は期待できるのでしょうか?
ホワイトニングは、過酸化水素や過酸化尿素を主成分とする「ホワイトニング剤」と呼ばれる薬剤を歯に塗り、これらが酸素と水に分解されたのち、エナメル質に付着した色素と結び付いて無色透明化することで歯を白くするというものです。着色汚れなどを落とすときには非常に効果的ですが、テトラサイクリン歯の場合は原因がまったく異なりますから、ワインやコーヒー、タバコなどの汚れを落とすような、劇的な効果は期待できません。
しかし、軽度のテトラサイクリン歯であれば、ホワイトニングによる改善が期待できる場合もあります。変色の程度が比較的弱ければ、「オフィスホワイトニング」(歯科医院で行うホワイトニング。1日で効果を実感できるが持続期間は平均して6ヵ月ほど)と「ホームホワイトニング」(歯科医師の指導の下、自宅で行うホワイトニング。効果が出るまでに時間がかかるが、持続時間は1~2年ほど)を併用し、じっくりホワイトニングに取り組むことで、標準的な色へと近づけることが可能です。
ただし、変色の程度が強い場合は、ホワイトニング効果はあまり期待できませんし、ホワイトニングを行った結果、これまでさほど目立たなかった「色の淡い縞」が目立ってしまった例もあります。また、テトラサイクリン歯の症状は、幼児期に投与された抗生物質の量によって一人ひとり違います。つまり、実際に歯の状態を見てみないことには、ホワイトニングの効果を「期待できる」とは申し上げられないのです。
まず歯科医師に相談を!
以上のことから、歯科医師としておすすめしたいのは、ホワイトニングを受けるかどうかを決めるまえに、「歯科医師の診断を受けること」です。
先ほども少しお話ししましたが、ホワイトニングにもオフィスホワイトニングとホームホワイトニング、またそれらを両方行うデュアルホワイトニングなどの種類があり、それぞれホワイトニングにかかる時間や効果の継続期間が違います。
それらを組み合わせることで十分な効果を得られるのか、それとも得られそうにないのか。まずは、歯科医師が歯の状態を診断する必要があるのです。もしテトラサイクリン歯でお悩みの方がいらっしゃいましたら、一度プレジールで診察を受けられてみてはいかがでしょうか。
なお、プレジールでは自然の歯に貼り付けて白い歯を作る、患者様用の創作歯「ティーシーズ」を使った施術も行っています。これは、付け爪をつけるように歯に貼り付ける物で、歯を削る必要がありませんから、体への負担が少ないことが特徴です。ホワイトニングよりも抜本的なお悩みの解決になると判断した場合、ご提案させていただくこともあります。こちらも併せてご検討ください。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。