こんにちは!デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読くださり、ありがとうございます。ここでは、毎回1つのテーマについて、私・中村 が皆様のお口の美容と健康に関する話をお届けしています。このコラムが少しでも、皆様のお役に立つことができましたら幸いです。
さて、今回取り上げさせていただくのは「金属アレルギー」についてです。金属アレルギーといえば、「ピアスや指輪など、金属のアクセサリーを身に着けたときに、かぶれやかゆみの症状が出るもの」というイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。しかし、実は原因となる金属は身に着ける物だけとは限りません。歯科治療に使われる銀やアマルガムなどの金属が、アレルギーの原因となることもあるのです。歯科治療が原因の金属アレルギーの症状や対処法、予防法について、審美歯科医師のホンネでお話しいたします。
目次
口内の金属が全身に影響を及ぼす
金属アレルギーのメカニズムは、まず溶け出した金属がイオン化して体内に入り、タンパク質と結合してアレルギーの原因物質である「アレルゲン」に変質。体にとっては異物である「アレルゲン」を排除しようとして体に過剰反応が起こる、というものです。症状としてはかゆみやかぶれが有名ですが、必ずしもそれだけではありません。
注意しなければいけないのは、局所的な症状だけでなく、全身に影響が出る可能性があることです。特に口内の金属が原因の場合は、口内の粘膜のただれや口内炎など、口の中にのみ症状が出る場合もありますが、溶け出した金属が蓄積されることで、アトピー性皮膚炎や脱毛症、頭痛、けだるさなど、全身の症状につながる場合もあるのです。
詰め物・かぶせ物に注意!
歯科治療で使われている物で、金属アレルギーの原因となる可能性がある金属には次のようなものがあります。
アマルガム
虫歯を削ったあとの詰め物材として、長いあいだ世界的に使われてきた金属で、40~50%の水銀のほか、銀、スズ、銅などからなる化合物です。日本でも保険診療の適用材料とされ、長年使用されてきました。しかし、水銀は口の中で劣化・蒸発しやすく、その結果、水銀の粒子が体内に流出して脳や腎臓、肝臓などに蓄積される危険性が指摘されています。水銀は毒性が強い物質であり、その蓄積の影響が不眠や頭痛、イライラ、原因不明の痛みとなって表れる可能性も示唆されています。そのため、現代ではほとんど使われていませんが、使用がピークとなった1970年代前後やそれ以前に虫歯治療を受けている場合は、詰め物材として使われている可能性があります。
12%金銀パラジウム合金
いわゆる「銀歯」の材料であり、虫歯を削ったあとの詰め物やかぶせ物として、保険治療で最も多く使われている素材です。ただし、リンパ球幼若化テストという金属アレルギー検査では、約半数の人に陽性反応が見られ、人体への影響が懸念されることから、ドイツでは保健省が歯科業界に対し「銅を含有するパラジウム合金は使用しない」という勧告を出しています。
銀合金
保険診療の適用材料のひとつで、軟らかい金属なので、乳歯の詰め物や永久歯のかぶせ物の土台に使われます。錆びやすく、溶け出して歯茎を黒く変色させる場合があります。
歯列矯正やインプラントに使う器具が金属アレルギーを引き起こすことも
詰め物やかぶせ物の材料として使われる金属以外にも、歯列矯正に使うワイヤーやインプラント治療で顎の骨に埋め込むインプラント体(歯の根にあたる部分)が金属アレルギーの原因となる場合もあります。
ワイヤーはニッケルやクロムを含む物が多く、インプラント体の素材としてはチタンが多く用いられています。チタンは金属アレルギーが起こりにくい金属ではありますが、人によってはチタンアレルギーの人もいますので注意が必要です。
治療法は「疑わしい金属は除去する」こと
金属アレルギーの症状は、口内炎ができたり口の粘膜がただれたりする、歯肉炎ができる、手足の裏にのう胞ができる、発疹ができる、アトピー性皮膚炎が出る、発熱する、だるさを感じるなど、さまざまな形で表れます。
虫歯治療などで口の中に金属が入っている心当たりがあり、「金属アレルギーかな?」と少しでも感じたら、まずは金属アレルギーの診療を行っているクリニックを訪れて、検査を受けてみるといいでしょう。パッチテストでどの金属にアレルギー反応が出るかを調べ、原因となっている金属を特定することができます。
原因となっている金属が特定できれば、アレルギーの治療と並行して、疑わしい金属を歯から除去することが大切です。例えば、12%金銀パラジウム合金の銀歯のかぶせ物が原因なら、歯科医院で銀歯を除去して、非金属の新しいかぶせ物に交換してもらう必要があります。
非金属の歯科素材として代表的なものは、プラスチックの一種であるコンポジットレジンと陶器の一種であるセラミックです。このうちコンポジットレジンは、保険診療が適用できるため安価で、処置が早く終わるなど多くのメリットがある反面、強度はさほど強くなく、経年劣化により変色するなどがデメリットとなります。一方、すべてセラミック素材を使う「オールセラミック」という方法は、天然の歯よりも硬い強度で、自然の歯に近い光沢と白さを持つ、審美的に美しい仕上がりになる、経年劣化がほとんどないなどのメリットがある一方、自費診療となりますので1本あたり10万~15万円と価格が高いのがネックです。
また、原因となる金属をすべて取り除いても、症状が治まるまでの期間には個人差があります。平均でも数ヵ月以上はかかりますので、焦らず治療に取り組んでください。
このように、歯の治療にどんな素材を使うかは、見た目の問題だけでなく、金属アレルギーのように全身に影響を及ぼす問題でもあります。歯科治療で使った金属が、知らず知らずのうちに金属アレルギーの原因となっていることもありますので、治療にどんな素材が使われているか日頃から興味を持っておくことは、予防のために役立ちます。ちなみに、プレジールで行っている審美治療「ティーシーズ」は、金属はまったく含んでいませんので、安心してご相談ください。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。