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すきっ歯は大人になってからも進行する!原因や治療法は?

2024.08.20

すきっ歯

出っ歯

歯並び

歯列矯正

こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読くださり、ありがとうございます。 皆様のお口の美容と健康の維持に、このコラムが少しでも役立てばと願っております。

さて、今回取り上げたいのは、「大人になってからのすきっ歯・出っ歯の進行」です。特に「大人になってからの」とつけたことには意味がありまして…プレジールの患者様からのご相談に、「昔はそうでもなかったのに、20代になってからすきっ歯・出っ歯が目立ってきた」というお悩みが意外と多いからなのです。大人になってから徐々に進行していることを気にされている方が多いように感じておりましたので、テーマとして選ばせていただきました。

この現象は、歯科用語では「フレアーアウト」と呼ばれ、口内の環境次第で誰にでも起こりうるものです。その原因や治療法について、歯科医師のホンネでお話ししたいと思います。

噛み合わせの悪さがフレアーアウトの主原因

フレアーアウトをより正確に表現しますと、「前歯の歯並びが前に向かって放射状に倒れていく」現象ということになります。その結果、歯が前方に突き出したいわゆる「出っ歯」と、歯と歯のあいだに隙間ができる「すきっ歯」が同時に進行していくのです。特に痛みもなく、大人になってから長い時間をかけて進行しますので、変化に気づきにくいかもしれません。ふと鏡を見た瞬間に、「あれ?」と違いを感じた方も多いのではないでしょうか。

このフレアーアウトは、何らかの要因で「長期間、歯に外向きの力がかかり続けた」結果、歯が動いてしまうことで起こります。その原因となるのは、およそ次のようなものです。

  • 噛み合わせの悪さ
  • 歯周病による歯槽骨吸収
  • 奥歯を失う

噛み合わせの悪さ

噛み合わせが良い状態であれば、噛む力は複数の歯に分散し、ある1本の歯だけに大きな力がかかることはありません。しかし、歯並びの悪さからうまく噛み合っていなかったり、インプラントやクラウンなどの人工歯が合っていなかったり、虫歯の歯を使わないように無理な噛み方を長年続けていたりすると、噛み合わせのバランスがだんだんずれてきます。その結果、特定の歯に強い力がかかり続け、歯が傾斜してしまうのです。

歯周病による歯槽骨の吸収

健康な歯の根の周りには「歯槽骨」という歯周組織が歯を支え、歯が簡単に動かないように固定する役割を果たしています。しかし、歯周病の症状が進行すると、この歯槽骨が「吸収されて(溶けて)やせる」という現象が起こります。そうなると、支えを失った歯はぐらぐらになり、少しの力でも動いてしまいます。

奥歯(臼歯)を失う

奥歯(臼歯)には、消化しやすくするために食べ物をすりつぶす働きがあり、噛み合わせにおいて重要な役割を果たしています。虫歯や歯周病などで奥歯を失うと噛み合わせのバランスが崩れ、前歯への負担が増えて、前にせり出してきます。

すきっ歯をそのままにしてしまった場合のリスク

大人になってからのすきっ歯を放置すると、下記のようなリスクがあります。

  • 歯の移動
  • 噛み合わせの問題
  • 虫歯や歯周病のリスク
  • 見た目の問題
  • 発音への影響

それでは、それぞれのリスクについて解説させていただきます。

歯の移動

すきっ歯を放置しておくと、周りの歯が少しずつ動いてしまうことがあります。

特に歯並びが不安定になり、他の歯にも隙間ができたり、噛み合わせが悪くなったりすることがあります。

これが進行すると、矯正治療が必要になることもあります。

噛み合わせの問題

歯に隙間があると、噛み合わせが不均等になることがあります。

これにより、特定の歯に過度な力がかかり、歯がすり減ったり、痛みが生じたりすることがあります

また、顎に負担がかかり、顎関節症(あごの関節の問題)を引き起こす可能性もあります。

虫歯や歯周病のリスク

すきっ歯の隙間に食べ物が詰まりやすくなり、歯磨きやフロスが届きにくい部分ができるため、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。

特に歯周病は、歯茎が腫れて出血したり、歯がぐらつく原因にもなります。

見た目の問題

すきっ歯があると、笑ったときや話すときに隙間が目立つことがあります。

これが気になる場合、見た目に自信を持てなくなり、人前で笑うことや話すことを避けるようになるかもしれません。

見た目の問題がストレスや自信喪失につながることもあります。

発音への影響

歯の隙間が大きいと、発音に影響が出ることがあります。

特に「サ行」や「タ行」の発音が不明瞭になることがあり、これがコミュニケーションに支障をきたすこともあります。

無意識の習慣を改善して、噛み合わせの悪化を予防することが大切

噛み合わせの悪さは、歯並びの悪さや噛み癖のほか、頬杖やうつ伏せ寝といった日常的な習慣、集中時や睡眠中の歯ぎしり・食いしばりも原因となります。そこで、フレアーアウトの予防には、これらの歯並びを悪化させる原因を「できるだけ遠ざける」ことが重要となります。

具体的には、まず日頃の歯ブラシや歯科医院での定期的なメンテナンスをしっかりして、「虫歯・歯周病を防ぐ」ことが第一です。それに加えて、頬杖やうつ伏せ寝、集中時の歯ぎしりなどの癖がある場合は、できる限り意識して抑えるようにするといいでしょう。なお、就寝時の歯ぎしりは、意識して抑えることが難しいものです。マウスピースなどで対処することはできますから、歯科医院で相談してみるといいでしょう。噛み合わせの変化による場合は、かむ力が一箇所に集中しないよう、均等に力がかかるように調整をおすすめします。

歯並び悪化の根本原因を解消することが治療の第一歩

すでにフレアーアウトの症状が現れている場合、歯が自然に元通りになることはありませんので、治療を受ける必要があります。

治療は「フレアーアウトが起こった根本的原因を取り除く」第1段階と、「噛み合わせを良い状態に調整する」第2段階に分けて行います。具体的な治療内容は人によって異なりますが、およそ以下のようなものになります。

<第1段階の治療>

・噛み合わせの悪さが原因の場合
虫歯が原因で変な噛み癖がついているなら虫歯の治療を、インプラントや被せ物が合っていない場合はきちんと噛める物に変更して「噛み合わせを悪くした原因」を解消します。もちろん、生活習慣が原因の場合も同様で、就寝中の歯ぎしりがある場合は、マウスピースを使った治療などを行います。ちなみに、ストレスが溜まると歯ぎしりが起こりやすくなりますから、ストレスをできる限り上手にコントロールすることが大切です。

・歯周病による歯槽骨の吸収が原因の場合
歯周病がさらに進行すれば、ほかの歯でも歯槽骨の吸収が進む危険がありますので、歯周病が広がるのを食い止めることが先決です。まずはプラークや歯垢を除去して、歯周病の治療を根気強く行います。歯周病の治療はすぐには終わりません。歯科医院でのプロフェッショナルトリートメントとセルフケアが不可欠です。

・奥歯を失ったことが原因の場合
インプラント治療や入れ歯などで、口内環境に合わせて失われた歯を補います。それにより噛み合わせのバランスが回復し、前歯にかかる負担を減らすことができます。

<第2段階の治療>

第1段階で噛み合わせを悪化させた原因が取り除けたら、良好な噛み合わせを作るための歯列矯正へと進みます。ワイヤーやマウスピースなどを使って歯の位置を動かし、正しいポジションに戻してあげる段階です。

審美的にはすぐに矯正治療を行いたいと思うかもしれませんが、フレアーアウトは特定の歯に永続して強い力が加わることにより起こっています。原因を取り除かないまま矯正で無理矢理歯を動かしても、しばらくするとまた同じことが起きてしまいますから、第1段階の治療を避けて通ることはできません。しっかりと根本原因から治療することが大切なのです。

  • コラムに掲載されている施術などは、必ずしも当院でご提供してるサービスに限りませんので、ご了承ください。