皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、ありがとうございます。このコラムが皆様のお口の美容と健康に、少しでも役立てばと思っております。
さて、今回取り上げさせていただいたのは、ある読者の方からご質問いただいた「すきっ歯の治し方」についてです。審美歯科医師としてのホンネで、率直にお答えしたいと思います。
目次
Q:「すきっ歯」は自分で治せますか?
中学生のころから前歯がすきっ歯気味だったのですが、気になって何度も触っていたところ、さらに隙間が広がって、ひどいすきっ歯になってしまいました。歯を見られるのが恥ずかしく、もちろん写真写りも良くないので治したいのですが、矯正治療となるとお金も時間も掛かりそうなので躊躇しています。
インターネットで調べると、「指でぐいぐい押し続けると徐々に治った」「輪ゴムで縛っておくと隙間がなくなった」など、自力で治したという話がいくつか見つかりました。それが本当なら実践したいと思うのですが、本当に自力で治すことはできるのでしょうか?
I美
A:不可能ではないかもしれませんが、おすすめはできません。
I美様、ご相談ありがとうございます。
すきっ歯の治療でお悩みとのことですが、確かに歯科医院に行っての治療となると身構えてしまいますよね。できることなら、自分で治したいと思うそのお気持ちはとてもよくわかります。
そこで、すきっ歯を自力で治せないかということですが…。
結論から先に申し上げますと、自力での治療は「不可能ではないかもしれないが、おすすめできる方法ではない」というのが正直なところです。その理由は、「歯が動くことは、見た目以外にもさまざまな場所に影響を及ぼすため」ですが、もう少し詳しくお話しいたします。
欧米では「すきっ歯はセクシー」?
そもそものお話になりますが、「すきっ歯」というのは、「歯と歯のあいだに隙間ができてしまった状態」のことです。
どの歯にも起こるものですが、特に前歯のすきっ歯は目立つので、治したいと思っている方が多いのではないでしょうか。けれど実は、日本よりずっと歯列矯正に対して敏感な欧米では、「すきっ歯はセクシー」とか「チャームポイント」と感じる人が、かなりの数いるのです。
そんな文化ですから、歌手のマドンナさんをはじめ、スーパーモデルや女優にも、わざとすきっ歯を治療しない人はたくさんいますし、レディー・ガガさんは前歯の間を黒く塗って、わざとすきっ歯に見えるメイクをしていたこともありました。また、国によっては、すきっ歯のことを「幸運の歯」や「富の表れ」などと表現したりもするようです。
何だか不思議な感じもしますが、日本人は「八重歯」をチャーミングだと感じる一方、欧米の人々は「ドラキュラの牙に似ている」として嫌うのと同じかもしれませんね。
欧米では、マドンナさんに憧れて前歯のあいだに隙間を作る人が増えたともいわれています。日本では、欧米ほどではないかと思いますが、子供のころにおもしろがって触っていたら隙間が広がってしまった、個性を出そうとしたなどで、自分で隙間をさらに広げてしまったという人はそう珍しいわけではありません。
すきっ歯の日本人モデルもいる
フランスではすきっ歯は「幸運の歯」と呼ばれ、上の歯の隙間から幸運を呼び込むと信じられているそう。異性にモテる特徴でもあり、モデルや女優の中には治療せず自分のチャームポイントにしている方も多いようです。
一方、日本をはじめとしたアジア圏では、すきっ歯は隙間から幸せが逃げるとされ、見た目的にも良くないとされていますよね。コンプレックスに感じる方もいるようですが、すきっ歯だからと言ってモデルになれないわけではありません。上記でも紹介したように、海外では有名女優やモデルたちが歯列矯正をせずすきっ歯を個性として受け入れています。「八重歯」を可愛く思うように、すきっ歯も個性的で可愛い、おしゃれだといわれる時代もそう遠くないでしょう。
自力での矯正は、ほかの歯にダメージを与える可能性があります
しかし「自分で広げたのだから自分で治せるか?」といえば、これはまた別の問題です。
広げることができたのだから、同じように閉じることもできるはずだと思う気持ちはわかります。歯は1本ずつ完全に独立して生えていますが、隣の歯や口全体の噛み合わせにも深く関わっているのです。
指や舌で押し続けたり、長期間輪ゴムでしばったりすることでも、確かに歯の移動を促すことはできるでしょう。
しかし、噛み合わせのバランスや顎の状態がまったくわからないまま我流で矯正を行ってしまうと、たとえ気になっていた隙間は埋まっても、別の部分にすき間ができてしまったり、歯がねじれたり、ぐらついたりする危険性があるのです。
その詳しい理由については、以前のブログでも触れていますので、こちらも見ていただければと思います。
「歯を動かす」ということはそれほど一大事であり、後々まで良好な状態を保っていくためには、全体の噛み合わせのバランスにも配慮して、細心の注意を払っていくことが必要なのです。歯は見た目ももちろん大切ですが、健康でしっかり食べ物が噛めることも同じぐらい大事なことです。歯や噛み合わせに悪影響を与える可能性がある自力での矯正は、やはりおすすめできません。
悪い癖をなくすことは効果的
ただし、「治療のために自分では何もできないか?」といえば、そういうわけでもありません。
すきっ歯をこれ以上悪化させないために、歯を指で引っ張ったり舌で押したりして力をかけてしまう習慣をやめることは非常に大切です。
特に後天的なすきっ歯の原因のひとつである「舌で歯を前に押し出す習慣」は、知らず知らずのうちにやってしまっていることも多いので、一度何もしていないときの自然な舌の位置をチェックしてみるといいでしょう。舌の先が、上の前歯の根本あたりにある丸い膨らみに触るのが正しいポジションです。もし、無意識に前歯を押してしまっているようなら、意識してこの位置に舌を置くようにしてみてください。
まずは歯科医院の受診をおすすめします
歯科医院で行うすきっ歯の治療方法には、歯に薄いセラミックを貼り付けて隙間を埋める「ラミネートベニア」や、かぶせ物をつける「セラミッククラウン」、取り外し可能なマウスピースを使った矯正、ワイヤーをつけて行う矯正とさまざまなものがあり、噛み合わせ全体のバランスを見ながら、最も適した治療法が選ばれます。
お金や時間がどれぐらいかかるかは治療法によって違いますし、必ずしも矯正治療が必要になるわけではありません。
ご自分の歯の「今の状態」を把握し、どんな治療が必要なのかを知るためにも、まずは歯科医院を受診されてみてはいかがでしょうか。
プレジールでも、自分の歯を削らずにつけられる患者様専用の創作歯「ティーシーズ」を用いた治療を行っていますので、いつでもご相談いただければと思います。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。