こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。
審美歯科医の目線から、患者様が本当に知りたい・本当に役立つ情報をお届けしたいという気持ちでお届けする「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」。このコラムでご紹介している情報が、皆様のお役に立つことができれば幸いです。
さて今回は、歯科でよく使われる「セラミック」という素材にスポットを当て、セラミックの性質やメリット、特徴、そして、ぜひ知っておいていただきたいことや注意点などを審美歯科医の立場からお話ししたいと思います。
目次
セラミックとは?特徴を解説
セラミックは陶器よりも強く金属より硬い
皆様は、「セラミック」と聞くと、陶器のようなものを想像されるのではないでしょうか。あるいは「ファインセラミックス」など、非常に硬くて軽い新素材を連想される方もいらっしゃるかもしれませんね。
歯科治療で使われるセラミックは、「高強度セラミックス」と呼ばれるものです。原材料を焼成して作るという点は陶器と同じですが、一般的な陶器よりもはるかに強く、ステンレス鋼などの金属よりも何倍も硬いという特徴を持っています。
酸に強く、変色しにくい
耐摩耗性(すり減りにくさ)、剛性(変形しにくさ)なども金属よりすぐれ、酸にも強く、長年使用しても変色しにくいといった特徴があります。
金属に比べると衝撃に弱い
これは一般的な陶器にも共通するのですが、セラミックには、金属と比べると「もろい(衝撃に弱い)」という弱点があります。
例えば、アルミのカップを床に落としても凹むだけですが、陶器のカップを落とすと粉々に割れてしまいますね。「硬さ」と「もろさ」は、似ているようで、実はまったく別の性質なのです。
もちろん、歯科治療に使われる高強度セラミックスは、このような弱点はかなり克服されており、今も年々技術は進歩しています。近年では、セラミックの歯が割れることは珍しくなってきました。それでも、やはり金属と比べると、若干もろいことは否定できないようです。
なぜオールセラミックの人工歯は美しい?
セラミックを使った補綴物(ほてつぶつ=歯の治療に使われる素材のこと)には、セラミック以外の素材を使わない「オールセラミック」と、セラミック以外にニッケルやパラジウム、金、プラチナなどの金属を使う「メタルボンド」があります。
歯科医が単に「セラミック」と言った場合、必ずしもオールセラミックを指すとは限りません。「セラミックを使った補綴物」という意味でメタルボンドを含む場合がありますから、診療時に「それはオールセラミックという意味ですか?」と確認したほうがいいかもしれません。
メタルボンドの場合、外観はセラミックそのものですが、実は金属のフレームの表面にセラミックを焼き付けたものとなっています。
メタルボンドはセラミックの美しさと金属の耐久性を併せ持つすぐれた補綴物ですが、審美的には、やはりオールセラミックに及ばないと思います。
というのは、人間の自然な歯は、ペンキで塗ったような真っ白ではなく、透明感のある乳白色をしているからです。また、歯の色には個人差があり、患者様一人ひとりに対して繊細な色合わせを行わなくてはなりません。
その点、元々オールセラミックは半透明の素材で、人間の歯の質感とあまり違いがありません。
そして、微妙に色合いが違う膨大なカラーの中から、その人の歯に最も近い色の人工歯を選ぶことができるようになっています。
さらに、選んだセラミックに微調整用の着色を行います。これは、表面に塗るのではなく、陶器と同じように人工歯の中に焼き込むため、色落ちや変色はほとんどありません。
ラミネートベニア等の薄いセラミックは、セラミックを自分の歯に接着する際のセメント(歯科専用の接着剤)に色のついたものを選ぶことで、微妙な色合わせができます。これは、適度な透明度を持つオールセラミックならではの調整方法です。
歯の色は、明るい日差しの下や自然光が入る昼間の室内、照明に照らされた夜の室内など、環境によって違って見えます。このようなさまざまな環境の違いがあっても、技術の高い技工士が作ったオールセラミックのクラウン(被せ物)や差し歯なら、天然の歯とほとんど見分けはつかないでしょう。
このような理由から、オールセラミックは、少なくとも現代の歯科技術では最も天然の歯に近い色や質感を表現できる、審美的には理想的な補綴物といえるでしょう。
オールセラミックのメリット
オールセラミックのメリットは、審美性だけではありません。
オールセラミックには人体に有害な成分が含まれていないため、長年使用しても安心です。また、セラミックは経年による劣化が起きにくく、変色するようなこともありません。
そして、セラミックの表面はツルツルしているため、歯垢や歯石が付着しにくいといったメリットもあります。
これに対して、メタルボンドの場合、自分の歯に接する部分が金属のため、金属の成分が流れ出し、長年のうちに歯茎が黒くなってしまう可能性があります。これは「メタルタトゥー」と呼ばれる現象で、歯肉の奥深くまで金属イオンが浸透してしまっているため、ブラッシングやクリーニングなどでは黒さを取ることはできません。
また、金属アレルギーがある方にもメタルボンドはお薦めしにくいでしょう。
オールセラミックであれば、このような心配はありません。
オールセラミックの注意点
ただし、オールセラミックも万能の補綴物というわけではありません。
最初に申し上げたように、金属に比べるともろいため、強い噛み合わせの力が加わると、欠けや割れが発生することがあるからです。特に歯ぎしりや食いしばりが強い方の場合、ジルコニアやメタルボンドなども検討できるのではないでしょうか。
しかし、特に人目につきやすい前歯などには、オールセラミックは最適です。また、奥歯でも口を開いたときには、銀歯などが目立つ場合があります。こういう場合は、オールセラミックインレー(詰め物)を施術することで、歯の自然な白さを取り戻していただけるでしょう。
それから、オールセラミッククラウンは、十分な強度を維持するため、金属のクラウンに比べてやや厚みを持たせる必要があります。このため、装着する際に自分の歯を削る量がちょっと多めになります。
さて、気になる費用面についても少々触れておきましょう。
審美歯科の施術は、ほとんどが保険適用外となるため、一般的な歯医者さんにかかるよりもどうしても費用が大きくなってしまうのですが、オールセラミックも保険は適用されないため、一般的な金属製、あるいは樹脂製の補綴物よりもかなり割高になってしまう傾向があります。
確かに、プレジールの料金表でも、ハイブリッドセラミック(セラミックに近い樹脂)などの価格と比べると、オールセラミックはかなり高価です。しかし、ここでご説明したようなオールセラミックの審美的な長所や寿命の長さなどを考慮すると、「長い目で見れば結局安上がり」になる可能性があるのではないでしょうか。
オールセラミックを含め、さまざまな選択肢の中から最適な施術を!
いかがでしょうか。セラミック、そしてオールセラミックという素材の魅力や特徴、注意点はよく理解していただけましたか。
硬くて経年劣化が少なく、審美的には最高の条件を備えたオールセラミック。しかし、「もろさ」という弱点があることも考慮して、目立つ部分に効果的に用いたいですね。
なお、「いくら美しくても、歯を大きく削るのはイヤ!」という方には、自分の歯の表面に薄い人工歯を貼り付ける「ティーシーズ」や「ラミネートベニア」といった技術もご検討いただけます。
「前歯が欠けた」「虫歯になった」など、自分の歯に治療が必要な場合であれば、オールセラミックによるクラウンやインレーは有力な選択肢のひとつです。
しかし、「健康な歯を削らない・抜かない」ということにこだわりを持つプレジールの審美歯科医としては、歯を美しくできる方法がほかにも選べる患者様に対して、健康な歯を削る・抜くなどしてオールセラミックを積極的にお薦めするようなことはありません。
「歯を美しくしたい。歯並びをキレイにしたい。オールセラミックしか方法はないの?」とお悩みの方は、お気軽にプレジールにご相談ください。
特定の施術だけをお薦めするのではなく、患者様の歯の状態やご希望に合わせて、さまざまな施術の中から最適なものを選んでご提案させていただきます。
もちろん、「ひとまず相談やカウンセリングだけでも受けてみたい」という方も大歓迎です!
お口の中チェックや、施術後にどうなるかが疑似体験できるシミュレーションなどもぜひお試しください。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。