皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読くださり、ありがとうございます。ここでは私・中村が、毎回1つのテーマについて、皆様のお口の美容と健康に関する話をお届けしています。このコラムが、少しでも皆様のお役に立つことができましたら幸いです。
先日、読者の方から「歯の神経」について質問をいただきました。歯の健康を考える上で、神経が残っているかどうかは非常に大きな問題ですが、歯科関係者以外にはその役割や重要性が伝えきれていないように思います。セラミッククラウンなどによる審美歯科とも関わりのある部分ですので、今回はこのテーマを取り上げさせていただきます。
目次
Q:歯の神経を残すことにはどんな意味がありますか?
出っ歯に悩んでおり、前歯にオールセラミッククラウンを被せる治療を検討中です。しかし先日、担当の審美歯科医師から「神経を残した状態でセラミッククラウンを被せるには、出っ歯を削る量に限界がある。希望どおりに歯を引っ込めることはできないかもしれない」と言われました。その時は、とっさに「考えてみます」と答えてしまったのですが、神経が残っているのといないのとでは、何が違うのかを聞いておけば良かったと後悔しています。多少仕上がりの形を我慢しても、歯の神経は残すべきなのでしょうか? 神経があるのとないのとでは、何が違うのでしょうか?
S華
A:神経には大事な機能がありますが、抜髄が必要な場合もあります
S華様、ご質問ありがとうございました。その場では思いつかなくても、あとから質問したくなることはたくさんありますよね。セカンドオピニオンにプレジールを選んでいただき、ありがとうございます。
お尋ねのとおり、歯の神経の果たしている機能がわからなくては、残すべきかどうかの判断もできないと思います。神経には大事な役目がありますが、目的によっては抜髄が必要な場合があるのも事実です。そこで、神経の働きや、オールセラミッククラウンを被せるにあたって「なぜ神経が問題になるのか」「神経の扱いをどう判断すればいいのか」など、歯の神経に関するお話を、審美歯科医師としてのホンネで率直にお伝えしたいと思います。
神経のおもな役割は、あなたの歯を守ること
歯の神経には、おもに以下のような機能があります。
・痛みを伝える
虫歯の痛みを感じられるのは、歯の神経が生きている証拠です。神経を抜いてしまった歯は、たとえ虫歯になっても、冷たい物や温かい物が染みるといった痛みを、感じる事が出来なくなります。一見、良いことのようにも思えますが、痛みは体からのSOSなのです。そのシグナルがなくなればその分虫歯の発見が遅れ、重度になるまで気付かない場合も少なくありません。
・歯を守る
神経の周辺には血管やリンパ管が張り巡らされており、ここから歯に水分の補給を行っています。神経を取る場合は、これらもいっしょに取ることになります。すると、水分の補給ができなくなった歯は、年月とともに枯れ木のようになり、大きな衝撃に耐え切れずにヒビが入ったり、割れてしまう可能性が高くなります。また、新陳代謝が起こらず、古い組織がそのまま残るため、徐々に黒く変色していくことがあります。
・温度を感じ取る
口に入れた物の温かさや冷たさを感じ取ることも、歯の神経の役割のひとつです。おいしく食事をすることにも、実は一役買っているのです。
神経を取ることは、元来、歯を守るために備わっている機能を損なうことなのです。その結果、歯の寿命が縮んでしまうことが多いというわけです。
オールセラミッククラウンでは抜髄が避けられないときも
では、どんな場合に歯の神経を抜く措置が必要になるのでしょうか。
S華様が検討していらっしゃるオールセラミッククラウンとは、歯を全体的に削り、そこにセラミック(陶器)製の被せ物や差し歯を被せる治療法です。天然歯と同等の見栄えの良さがあり、年月が経っても変色することがなく、金属を使用したときのように、歯茎の黒ずみも起きないことがメリットで、審美歯科においてはメジャーな治療法のひとつです。
オールセラミッククラウンを行うすべてのケースで神経の除去が必要なわけではありませんが、うまく被せて固定するためには、元の歯をある程度削る必要があります。セラミックを薄くすることで歯を削る量を最小限に抑え、神経を残せる場合もありますが、あまり薄くするとセラミックの強度が下がってしまうので、自ずと限界は存在します。
オールセラミッククラウンを被せるために必要な場所まで削ると神経に到達する場合は、そのまま治療を進めると非常に痛むため、神経を抜く必要が出てきます。削る形を変えるなど、歯科医師の技術次第でカバーできる場合もありますが、中には希望どおりの形を実現するためには、どうしても神経を取らざるをえない場合があるのです。
高い技術があり親身になって相談に乗ってくれる歯科医院を選ぼう
どういうケースであれば「多少見栄えを犠牲にしても神経を残す」べきで、どういう場合なら「抜髄してもそれほど影響がない」のかは、お一人おひとりのご希望によって異なります。特にオールセラミッククラウンの治療を受ける際は、あとで後悔することがないように、信頼できる歯科医師に相談し、そのメリット・デメリットについて十分な説明を受けた上で決定することが大切です。
S華様も、これまでの疑問や質問を含め、改めて担当の歯科医師としっかり話し合われると良いでしょう。プレジールでも、患者様の立場に立って的確なアドバイスをさせていただいておりますので、セカンドオピニオンとしていつでもご利用ください。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。