コラム

Column

雨の日、低気圧になると歯痛が発生する原因と対策について歯科医師が解説

2019.01.16

その他

「雨の日、低気圧になると発生する歯痛…これってどういうこと?
原因と対策が知りたい!」

昔から「雨が降ると古傷が痛む」「雨が降ると関節が痛む」などと言われてきたように、天候は私たちの体に大きな影響を与える要素です。それは歯についても例外ではなく、「天気が悪い日は歯が痛む」という人は、意外と多くいるものです。

この記事では「雨の日、低気圧になると発生する歯痛」に対して、歯科医師がその原因と対処法を解説します。

具体的には下記のようなことをお伝えします。

  • 気圧が歯に与える影響
  • 痛みを感じやすい人
  • 気圧の変化による痛みを防ぐ方法

本記事をご覧になって頂くことで「雨の日、低気圧になると発生する歯痛」で悩むあなたに対してどのようにするべきかがハッキリするはずです。まずは本記事をお読み頂き、歯科医院に相談・治療することをオススメします。

気圧が歯に与える影響

「天気の悪い日は歯が痛む」のは昔から経験則としては知られていましたが、長らく科学的な説明はなされていませんでした。現在も、まだ全貌は明らかになっていませんが、雨の日に歯痛が発生する原因のひとつとして考えられるようになったのが「気圧の変化」です。

歯の中心には「歯髄腔」と呼ばれる神経(歯髄)を収めた空間があり、その周りを象牙質、さらにその外側をエナメル質が包む3重構造になっています。歯髄腔の内部の気圧は通常、外の気圧と同じになるように保たれていますが、短時間に急に外の気圧が変化すると調整が間に合わず、外の気圧と歯髄腔内部の気圧に差が生じる場合があります。雨をもたらす低気圧は、読んで字の如く気圧が低い状態ですから、これが訪れると歯髄腔の外界の気圧は通常に比べて低下します。その結果、外側の世界と歯髄腔の内部に気圧差が生じ、内部から歯に圧がかかることで、歯が痛むことがあるのです。

このような現象が起きるのは、低気圧が接近しているときだけに限りません。同じ場所、同じ気象条件下でも、高度が上がれば気圧は下がりますので、飛行機に乗った場合や高い山に登った場合も同様のメカニズムで歯痛が起こることがあります。ちなみに、飛行機に乗った際に起きる歯痛は「気圧性歯痛」「航空性歯痛」と呼ばれており、航空会社も注意を呼びかけています。

「雨が降ると歯が痛む」は、すでに江戸時代から言われていた

このような、「雨が降ると歯が痛む」現象は現代に始まったことではありません。昔からそう思われてきたことは、江戸や明治の文化人の記述にも見られ、例えば江戸時代から明治初期に活躍した箏曲家・葛原勾当がつづった日記(※)には、気象関係と歯痛のことが頻繁に登場しています。

※後に太宰治がこの日記を元にした小説「盲人独笑」を発表したため、多くの人に読まれています。

痛みを感じやすいのはどんな人?

「雨が降ると歯が痛む」現象には、昔から多くの人が苦しんできたわけですが、気圧が下がれば全員が歯に痛みを感じるのかといえばそうではありません。気圧による変化を受けやすいのは、次のような状態の人であることがわかっています。

・虫歯がある、または虫歯治療中である
・虫歯治療済み歯(詰め物や被せ物をした歯)がある
・歯茎や歯の根に膿が溜まっている

外部の気圧が下がり、歯髄腔の内部との気圧差が生じると、相対的に高くなった歯髄腔の空気は膨張し、周りの神経に刺激を与えます。歯痛はその結果として起きるものなので、治療せずに放置した虫歯がある場合や、過去に治療した箇所がある場合は、痛みを感じやすい傾向があるというわけです。なお、歯茎や歯の根の先に膿が溜まっている場合も同様です。

注意したいのは、普段は特に痛みを感じなくても、詰め物や被せ物をしてから数年経つうちに、小さな隙間から治療した歯の中に細菌が侵入し、再び虫歯になっていたという場合もあることです。まだ症状が軽い場合や、すでに歯の神経を抜いてしまっているときは、虫歯が進行していても気付けないことがあります。もし、雨天や飛行機に乗る度に同じ場所に痛みを感じるようなら、一度歯科医院を受診して虫歯になってないかチェックしてもらうといいでしょう。

気圧の変化による痛みを防ぐ方法

気圧の変化による歯の痛みは、ある意味自然現象に近いものです。気圧をコントロールして痛みを抑えることはできませんが、口の中の状態を変えることで痛みを防ぐ方法はあります。次のようなことに気を付けてみてください。

普段から定期健診に通う

普段から定期健診で歯科医院に通い、虫歯や歯周病のない健康な口腔内を保っておくことは、気圧の変化による痛みを防ぐ上で何より有効な方法です。梅雨が来る前や登山に出掛ける前、飛行機に乗る前には、虫歯は治しておきましょう。

鎮痛剤を飲む

日常的に降る雨の対処法としては難しいですが、飛行機に乗る際は予め鎮痛剤を飲むことも効果があります。虫歯の治療中に、どうしても飛行機に乗る必要がある場合などには歯科クリニックで処方してもらえますし、鎮痛剤を持たずに飛行機に乗った場合でも、航空会社に事情を説明すれば提供してもらえることがあります。

精神的な不安を取り除く

「毎年梅雨の時期になると痛みを感じることが多い」「昔、虫歯治療中に飛行機に搭乗して非常に痛みを感じた」といった経験があると、同じようなシチュエーションになった場合に痛みを感じるケースがあります。
その原因は、肉体的なものもありますが、「また痛くなるのでは?」という心理的不安が影響していることが大きいのも特徴です。以前に経験した痛みは以前のものとして、あまり引きずり過ぎないことも痛み対策に役立ちます。

まとめ、歯が健康なら雨や気圧の変化も怖くない!

いかがでしたでしょうか?
「雨の日、低気圧になると発生する歯痛」に対してどのようにすべきかはご理解いただけましたでしょうか?

本記事ではこのようなことをお伝えしてきました。

  • 気圧が歯に与える影響
  • 痛みを感じやすい人
  • 気圧の変化による痛みを防ぐ方法

「天気が体調に変化を及ぼす」という昔ながらの体感は、決して気のせいではなく、十分な科学的根拠があるものです。口の中に虫歯や歯周病があると、天候や季節の変化によって、思わぬ痛みを感じることがあります。快適に日常を送るためにも、日頃からブラッシングと定期健診を通じて、口腔内の健康を維持することを心掛けてみてください。

本記事があなたの悩みに対しての解決策が見つかるものになっていただけたら幸いです。少しでも早く、歯の不安のない状態になることを願っています。

  • コラムに掲載されている施術などは、必ずしも当院でご提供してるサービスに限りませんので、ご了承ください。