皆様、こんにちは。デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読くださり、ありがとうございます。このコラムが皆様のお口の美容と健康の維持に、少しでも役立てばと思います。
さて今回取り上げたいのは、歯科治療の被せ物(クラウン)に使われる「ジルコニア」についてです。ジルコニアというと、人工ダイヤモンドの代表格である「キュービックジルコニア」が有名ですが、実はジルコニアは歯科治療においてもおなじみの素材です。
被せ物に使われる素材はジルコニア、メタルボンド、金合金などさまざまあり、使われる被せ物の材質は歯科医院によってもまちまちです。「セラミックとジルコニアセラミックではどう違うのだろう?」「フルジルコニアとジルコニアセラミックの違いは何だろう?」など、素材の違いがよくわからないという方も多いと思いますので、このテーマを選ばせていただきました。審美歯科医師として、ホンネで率直にお話ししたいと思います。
目次
強度、耐熱性、審美性のすべてを兼ね備えた素材
ジルコニアとは、原子番号40番の元素ジルコニウム(Zr)と酸素(O2)の化合物です。見た目は白色または透明感のある白色で、無機物を焼き固めた結合物全般を指す「セラミック(陶器)」の一種です。
常温状態ではとても強度が高く壊れにくいという特徴があり、工具や包丁、スペースシャトルの外壁、人工関節など、さまざまな場面で使われています。また、熱にもたいへん強いため、耐火材・耐熱材としても利用されています。
強度が高く、耐熱性に優れ、白色であるジルコニアは、審美性・耐久性の両方が必要な歯科治療にぴったりであることから、歯科素材としても注目されるようになりました。金属素材ではないので、金属アレルギーや金属が溶け出すことによる歯茎の変色の心配もなく、安全性が高い素材であることも評価されています。
ジルコニアクラウンにも2種類ある
ジルコニアを使ったクラウンには、すべての部分をジルコニアで作った「フルジルコニアクラウン」と、内側のフレーム部分にジルコニアを使い、表面には別のセラミックを盛った「ジルコニアセラミッククラウン」の2種類があります。
この2つはどちらが優れているというわけではなく、それぞれ特徴があり、求める内容や被せ物をする場所によって、どちらが向いているかが決まってきます。それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
フルジルコニアクラウン
ジルコニアを削り出して作る、100%ジルコニアのクラウンです。
メリット
- 強度・耐久性が非常に高く、破損することが少ない。
- 金属を使わないので、金属アレルギーや歯茎の変色の心配がない。
- 噛み合わせなどの関係でクラウンの厚みはとれないけれど、白い歯を入れたい奥歯などに最適。
デメリット
- 白色ではあるものの、審美性の点ではほかのセラミック素材に劣る。前歯など目立つ部位には不向き。
セラミックジルコニアクラウン
自然の歯と接触する内側のフレーム部分にジルコニアを、外側部分にほかのセラミックを使ったクラウン。数種類の透明度の違うセラミックを盛り付けることにより、自然な透明感や質感を出すことが可能です。
メリット
- 一定の強度・耐久性を保ちつつ、希望の色に合わせたクラウンができる。
- 金属を使わないので、金属アレルギーや歯茎の変色の心配がない。
- 前歯から奥歯まで汎用性が高い。
デメリット
- ジルコニア単体ではないため、強度・耐久性の点では、フルジルコニアクラウンに劣る。
ジルコニア以外のクラウンに使われる素材
ジルコニア以外にも、クラウンに使われる素材はいくつかあります。ここでは、ジルコニア以外の素材の特徴について、まとめて紹介します。
金銀パラジウム合金
保険診療で使われる金銀パラジウム合金は、いわゆる「銀歯」です。
金属なので耐久性が高く割れにくいこと、保険適用なので安価に治療が受けられることがメリットになります。逆にデメリットとしては、銀色なのでどうしても目立つこと、時間が経つと金属が溶け出して歯茎が黒く変色したり、金属アレルギーを引き起こしたりする可能性があることが挙げられます。
なお、前歯の場合、銀歯のフレーム部分は金銀パラジウム合金で、外から見える部分にはレジン(プラスチック)を盛り付けた物が使われます。保険適用なので安く治療を受けられますが、プラスチックは年月とともに黄色く変色することがあります。
メタルボンド
メタルボンドは、フレーム部分は金属で、外側にセラミックを盛り付けたクラウンです。保険適用外の素材となります。
セラミックなので見た目にも艶があり審美性が高いこと、プラークなどの汚れがつきにくいことがメリットです。一方、内側は金属なので、年月とともに歯茎が下がると、歯の付け根が黒ずんで見える可能性があります。また、時間が経つと金属が溶け出して歯茎の変色が起きたり、金属アレルギーを引き起こしたりする可能性があります。
セラミック
金属を一切使わないセラミックで作成するクラウンです。
「強度・耐久性の高さ」と、「金属アレルギーや金属による歯茎の変色などの心配がない安全性」「高い審美性」の3つを兼ね備えていることが何よりのメリットといえます。デメリットとしては、保険適用外であり、メタルボンドクラウンと比較しても費用が高いこと、そして、割れる可能性があることから、歯ぎしりをする人には向いていないことが挙げられます。
金合金(ゴールドクラウン)
金を主成分に、銀や銅、パラジウムなどを含めた素材で作ったクラウンです。
金銀パラジウム合金に比べても耐久性は格段に高く、しなやかな金属のため歯にもぴったりフィットすること、金属ではありますが金属アレルギーになりにくい素材であるというメリットがあります。一方、色は金色なのでどうしても目立ってしまうこと、また保険適用外であり、金相場により価格が変動することなどがデメリットになります。
クラウンの素材にはさまざまなものがありますし、一口に「セラミッククラウン」といっても、セラミックジルコニアクラウンがいい場合もあれば、フルジルコニアクラウンがいい場合もあります。実際に治療を受ける際には、ぜひ歯科医師に相談しながら自分にぴったりの物を選んでください。もちろん、プレジールもいつでも相談にのらせていただきます。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。