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タバコを吸うと虫歯にならないのは本当?歯が黄ばむのはなぜ?

2024.08.09

喫煙

虫歯

こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。
「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科”ここだけの話”」をご覧いただき、ありがとうございます。このブログでは、私のこれまでの経験や患者様のお話を基に、気になるけどなかなか聞けない歯の話や、口元の美しさにつながるヒントをお届けしています。

今回は、タバコが歯に与える影響について考えてみたいと思います。
世界保健機関発行のガイドラインは、受動喫煙を防ぐためには屋内完全禁煙が必要だとしています。これを受けて、日本でも受動喫煙防止の取組みが活発化し、条例を制定する自治体も散見されるようになりました。喫煙者にとっては少しずつ住みづらい世の中になりつつありますが、喫煙者本人、及び周囲の人の健康を考えればやむを得ないことなのかもしれません。
喫煙をしていると、しわやたるみが増え、いわゆる「スモーカーズフェイス」になるといわれています。さらに、歯科の視点で見ると、口周りのしわや、歯・歯茎の着色、虫歯、口臭などの原因になるのも気になるところです。
しわや口臭は別の機会に譲るとして、ここでは歯と歯茎の着色、虫歯に的を絞って見ていきましょう。

歯に色が着く原因とは?

歯に色が着く理由はタバコだけではありません。肺炎などの呼吸器の病気やニキビなどに効くとされている「テトラサイクリン系抗生物質」を乳児期から歯が生える時期に長期間服用していた場合や、詰め物が古くなった場合など、さまざまな原因が考えられます。
以下、代表的な歯の着色の理由を見てみましょう。

・加齢による変色
これは、ある程度やむを得ないものですね。年齢を重ねると、どうしてもエナメル質が薄くなり、黄ばんで見えてしまいます。

・進行した虫歯による変色
気付かないうちに虫歯が進行していると、歯が茶色や黒色に変色してしまいます。また、治療をはじめ何らかの原因によって神経を失った歯も、だんだん茶色くなっていきます。

・ステインによる着色
ステインは、お茶やコーヒー、赤ワインに含まれる「タンニン」という色素や、タバコのヤニが歯に付着したときにできる汚れです。お茶などは日常的に摂取する物なので、正しいブラッシングと効果的なケアがなければ、どんどん蓄積されて黄ばみやくすみの原因となってしまいます。

着色の原因となる物質の中でも、タバコに含まれるニコチンやタールは強烈です。タールはタバコの吸い口を茶色くする粘着性の物質で、汚れやニコチンを吸い寄せ、歯にしっかり付着して、歯の着色汚れの大きな原因となるのです。

タバコを吸うと、虫歯にもなりやすい?

「喫煙をすると歯に色がつきやすいというのはわかるけど、虫歯になるってどういうこと?」と疑問に思う方もいらっしゃると思います。しかし、実はタバコを吸う人は、吸わない人の約3倍も虫歯になりやすいといわれているのです。
いったい、なぜなのでしょうか。

理由1 ヤニが口内環境を悪化させていく

まず、タバコを吸うことによって歯や歯茎にヤニが付着します。口腔内を不衛生な状態にした上、歯茎の健康に欠かせないビタミンCを破壊して、口内環境をどんどん悪化させていきます。

理由2 口中が乾燥し、自浄作用が働かなくなる

虫歯菌が歯を溶かすために出す酸を中和してくれる唾液の分泌量も、喫煙によって低下します。その結果、口中が乾燥し、自浄作用が働かなくなり、歯垢が溜まりやすくなっていくという悪循環に陥ります。

理由3 歯垢が歯石に変化する

溜まりに溜まった歯垢は、だんだんと歯石に変わってさらに取れにくくなり、虫歯の原因となります。

喫煙から虫歯が誘発されるメカニズム、ご理解いただけたでしょうか。
「それでもタバコがやめられない!」という方に、少しショッキングなデータをお伝えしなくてはなりません。喫煙は、吸っている当事者の歯のみならず、周囲にいるご家族やご友人の歯にも多大な影響を及ぼす可能性があるのです。

副流煙でも虫歯の危険があります

タバコを吸っている人の近くにいて、副流煙を吸い込んでしまう「受動喫煙」。
受動喫煙により、目のかゆみやくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳といった、比較的軽微ながら他の病気につながりかねない症状から、気管支喘息、がん、心臓病といった重篤な疾患まで引き起こす可能性があることは広く知られています。

上記以外にも、受動喫煙には虫歯を引き起こすリスクがあります。
しかも、受動喫煙で虫歯になる割合は、子供が圧倒的に多いといわれています。親が目の前でタバコを吸う場合、その子供が虫歯になる確率はなんと倍になるのだとか…。

受動喫煙せざるを得ない環境に置かれた子供に虫歯が多い理由はまだはっきりとは解明されていませんが、タバコの煙を吸い込むことによって唾液成分が変化することがひとつの原因ではないかと考えられているようです。
喫煙者が虫歯になるメカニズムの中でご紹介したとおり、口中を清潔に保つ上で唾液は非常に重要な働きをしています。この成分に何らかの異常が生じることで、虫歯の原因菌が繁殖しやすくなり、歯垢が溜まって虫歯になるということでしょう。

受動喫煙が子供に及ぼす害としましては、ほかに気管支炎・小児喘息などの呼吸障害、小児がん、アトピー性皮膚炎などが挙げられます。どの病気も、小さい体には非常につらいものであることは明白です。親であれば、誰もが「できることなら病気にならないよう守ってあげたい」と思いますよね。

タバコをやめれば、多くの病気が防げると考えて!

タバコを吸うと歯が黄ばむほか、虫歯や歯周病になりやすくなり、周囲の人の健康をも阻害するというお話をさせていただきました。
皆様ご存じのとおり、タバコの弊害は口腔内だけに留まりません。全身のがんの遠因にもなるといわれていますし、心筋梗塞や脳梗塞の重要な危険因子であることもわかっています。糖尿病にもなりやすくなるほか、糖尿病に罹患している人が喫煙を続けると、治療に悪影響を及ぼすと多くの医師が警告しています。

今回は、タバコが歯に及ぼす影響を中心に、広くその弊害についてお伝えさせていただきました。
みずからの健康だけでなく、愛する家族や友人の健康も阻害しかねないタバコ。こうしてその弊害を見ていくと、「禁煙に真剣に取り組もうかな」という気持ちになるのではないでしょうか。
審美歯科、予防歯科の観点からも、喫煙はできるだけ避けてほしいというのが本音です。
「タバコをやめなければならない」ではなく、「タバコをやめれば、たくさんの病気が防げる」と考えて、ぜひ禁煙を検討してみてください。


  • コラムに掲載されている施術などは、必ずしも当院でご提供してるサービスに限りませんので、ご了承ください。