皆様、いかがお過ごしでしょうか。デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読くださり、ありがとうございます。本コラムでは、私、中村が審美歯科医師としての立場からホンネのお話をさせていただいております。皆様のお口の美容と健康に、少しでもお役に立てればと願っております。
さて、今回は「赤ちゃんの虫歯予防」をテーマにさせていただきたいと思います。先日、「赤ちゃんの唇にキスをすると、虫歯菌がうつる!」と心配していた若いお母さんがいらっしゃいました。ご自分だけでなく、お父さんやおじいちゃん・おばあちゃんにも「キスや口移し厳禁!」を徹底なさっているとのこと。確かに虫歯菌はキスでうつりますから一理あるのですが、気を付けることがストレスになってしまっているようにも見えました。
赤ちゃんの虫歯予防は大切ですが、すべてを完璧に気を付けることは大きな負担がかかります。そこで今回は、赤ちゃんの虫歯予防で気を付けるべきポイントについてご紹介したいと思います。
目次
新生児にキスすると虫歯になる?
虫歯は細菌による感染症です。
したがって、虫歯予防に有効な方法としてまず考えられるのは、虫歯菌に感染しないようにすることでしょう。生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には虫歯菌はいませんし、食べ物から虫歯菌がうつることもありません。では、どこから移ってくるかというと、親などの周りの大人からです。
唾液の中には多数の虫歯菌が含まれていますので、キスや口移しを行うと確かに虫歯菌は大人から子供へとうつります。このことだけを考えると、確かに「キスや口移し厳禁!」というのは、良い方法であるように思えます。
しかし、唾液を介した感染は、キスや口移しだけではありません。
咳やくしゃみをすれば唾液の飛沫は散りますし、家族で同じ食器やコップを使う、大人が使ったスプーンで赤ちゃんに食べ物をあげる、熱い食べ物にふーふーと息を吹きかけて冷ましてあげるなどの間接的な方法でも感染します。それらすべてに注意して完全に排除することは、忙しい子育ての中では無理があるでしょう。
また、家の中で育てているあいだは、食生活全般に気を配れますのでまだ何とかなったとしても、幼稚園や学校へ行くようになれば、どんなに気を付けても、遅かれ早かれ虫歯菌に感染してしまうのを防ぐことはできません。ですから、虫歯菌をうつさないことにこだわっても、努力のわりにあまり意味がないのです。それよりも、虫歯の感染を恐れるあまりスキンシップが減ってしまうほうが、赤ちゃんにとって悪い影響を及ぼす可能性が高いといえます。
そこで歯科医師の立場としては、いずれは感染するものとあきらめて、神経質になりすぎないことをおすすめします。
新生児にキスしてしまった場合の対処法は?
新生児にキスをしてしまった場合、もしくはキスをしてもいいようにするにはどうすればよいのでしょうか。
具体的な対応策として
- 大人の口の中をきれいにする
- 小さい頃からのデンタルケアを心がける
- 食生活に注意
などの方法があります。
それでは詳しくご紹介させていただきます。
周りの大人の口の中をきれいにすること
虫歯菌の感染が防げないと虫歯になるのも止められないのかといえば、そんなことはありません。唾液感染を完全に防ぐことはできなくても、赤ちゃんや子供の虫歯予防のためにできることはあります。まず1つ目は、周りの大人たちが自身の口の中をきれいにしておくことです。
たとえ赤ちゃんと接触することがあっても、大人の口腔内の細菌が少なければ、感染のリスクは下がります。お母さんなど常に赤ちゃんといっしょにいる人だけでなく、家族全員が口の中を清潔に保つように努めるといいでしょう。もちろん、虫歯があれば治療しておきます。
小さいころからデンタルケアの習慣を心掛けて
2つ目のできることは、小さいころからデンタルケアの習慣をつけてあげることです。たとえ虫歯菌に感染したとしても、虫歯菌の栄養となる甘い物を摂りすぎることなく、日々の歯磨きをしっかりして毎日プラーク(歯垢)を落としていけば、虫歯を防ぐことができます。
具体的には、3歳頃までに歯磨きを習慣化することを目標に、小さいころから少しずつ慣らしていくのがおすすめです。まずは口の中に何かを入れることに慣れさせるために、最初の歯が生え始めた生後半年頃から、指に巻いたガーゼでやさしく乳歯の汚れをぬぐってあげることから始めるといいでしょう。少し大きくなってきたら、赤ちゃん専用の歯ブラシを実際に持たせてあげて、歯ブラシに対する抵抗感を小さくするのも良い方法です。もう1本別に、お母さんやお父さん用の歯ブラシを用意して、1日1回は必ず歯磨きを行うようにしていきます。
そのあとは子供の成長に合わせて、徐々に自分で磨いたあとにお母さんやお父さんが仕上げ磨きをしてあげる体制に移行しましょう。子供が嫌がる場合には、キャラクター付きの歯ブラシを使ったり、うまく磨けたらシールでご褒美をあげたりして、ゲーム感覚で「歯磨きは楽しいもの」と思えるよう、工夫してみるのが良い方法です。毎日1度でいいので、歯磨きと仕上げ磨きをするようにしていれば、3歳になるころには歯磨きが習慣として自然と身に付いていきます。
食生活にも注意!
同時に、3歳頃までに身に付けておきたいのが、虫歯になりにくい食習慣です。
だらだらとおやつを食べたり、しょっちゅう清涼飲料水を飲んだりしていると、口の中は常に酸性で、虫歯菌にとって理想的な環境になってしまいます。小さいころに身に付けた習慣は、後々まで無意識に繰り返すことになります。
・おやつを食べるときは時間を守る
・清涼飲料水の代わりに、普段は水やお茶を飲む
・甘い物を食べ過ぎない
・何かを食べたあとは必ず歯磨きをする
などを習慣化しておくことは、虫歯予防にとても役立ちます。
また、食べ物を良く噛むこともぜひ習慣化しておきたいことの1つです。たくさん噛むと殺菌作用がある唾液がたくさん出ますので虫歯予防に役立ちますし、消化もされやすくなります。また顎の成長を促し、歯が生え変わったときの歯並びをきれいにすることにも役立ちます。
新生児にキスしてしまった!赤ちゃん口にキスはいつからOK?まとめ
歯は一度なくしてしまうと二度と元には戻らない、一生の付き合いになる長い友達のような存在です。
子供のときに身に付けた食事習慣や生活習慣は、後々まで大きな影響を及ぼしますので、赤ちゃんや子供のうちは虫歯菌の感染予防だけに気を取られずに、総合的に虫歯になりにくい習慣を身に付けさせてあげることに重点を置き、幅広いケアを心掛けてみてください。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。