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「歯を白くする歯磨き粉」は歯科医院のホワイトニングの代わりになる?

2024.10.27

ホワイトニング

皆様、こんにちは。デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、ありがとうございます。このコラムが皆様のお口の美容と健康の維持に、少しでも役立てばと思っております。今回は、ある読者の方から「歯を白くする」効果をうたう歯磨き粉についてのご質問をいただいたので、審美歯科医師としてのホンネで率直にお答えしたいと思います。

Q:歯を白くする歯磨き粉は効果がありますか?また、安全ですか?

歯の黄ばみが気になり、なんとか白くしたいと思っています。当初は歯科医院でホワイトニングを受けようと考えていたのですが、先日ドラッグストアに行ったところ、「歯が白くなる効果」や「ホワイトニング効果」があると書かれた歯磨き粉が、思いのほかたくさん売られているのを見つけました。歯磨きをするだけで歯が白くなるのなら、わざわざホワイトニングを受けることはないかなと思うのですが、いったいどういう仕組みで歯が白くなるのか、効果や安全性はどうなのかと不安が多く、購入をためらっています。
「歯が白くなる」「ホワイトニング効果がある」歯磨き粉は、安全なのでしょうか?

A:効果が期待できなかったり、リスクがある場合もあります

ご相談ありがとうございます。歯磨き粉の安全性についてお悩みとのこと。何十種類もの歯磨き粉を前にすると、いったい何が違うのか、効果をどこまで期待できるのか迷ってしまいますよね。
ホワイトニング効果をうたう歯磨き粉の安全性ですが、歯の状態は一人ひとり異なるため、同じ歯磨き粉でも役に立つ場合と害になる場合があり、一概に「こう」と言い切ることはできません。そこで、歯が黄ばむそもそもの原因や歯磨き粉が歯を白くするメカニズム、歯磨き粉と歯科医院で受けるホワイトニングとの差など、「歯を白くする」さまざまな方法の特徴とその違いについてお話ししたいと思います。

歯の黄ばみの原因はひとつではありません。次のようなさまざまなタイプがあります。

1. 元々黄色い

一般的に、歯の色は「白」というイメージがありますが、実は表面を覆うエナメル質は半透明で、実際に歯の色を決めているのはその下に透けて見える象牙質です。この象牙質は真っ白ではなく乳白色をしていますが、肌や髪の色と同じように白っぽかったり黄色っぽかったりと個人差があります。

2. 加齢

年齢を重ねるとともに象牙質の色は濃くなり、表面のエナメル質が擦り減って、より下の色が見えやすくなるため、歯全体が黄色みを帯びて見えるようになります。

3. 食べ物・飲み物などによる着色

コーヒーや紅茶、赤ワイン、カレーなど、色の濃い食べ物・飲み物をとったり、タバコを吸ったりしていると、エナメル質の表面に色素が付着し、歯が着色されて黄色くなってきます。

4. 歯石の付着

歯垢が唾液中のカルシウムなどのミネラル成分と結合すると、石灰化して乳白色のできる「歯石」となります。歯と歯の間に歯石が付くと白い歯が黄色く見えます。

5. 虫歯

虫歯になると、歯の色は段階的に変化していきます。エナメル質が虫歯になると歯は白濁色から黄色みを帯び、さらに下の象牙質まで進むと茶色っぽくなってきます。

このほか、胎児の時や、乳幼児期に病院で処方される薬の影響を受けたり、歯をぶつけて神経が死んでしまったりしたために変色するなどのケースもあります。

歯磨き粉で落とせるのは着色汚れだけ

ホワイトニング効果をうたう市販の歯磨き粉は、基本的に歯の表面についている着色汚れやヤニを落とすことによって、歯を白くするというもので、そのために研磨剤が配合されています。
内側から歯を白くするわけではないので、黄ばみの原因が食べ物・飲み物の着色汚れの場合は一定の効果が期待できますが、それ以外の場合ではあまり役に立ちません。また、研磨剤の粒子が粗かったり、磨く力が強すぎたりすると歯の表面を必要以上に削ってしまい、歯を傷付けたり、知覚過敏を引き起こしたりするリスクがあります。
最近では、イオンや酵素の力で汚れを浮かせたり分解したりすることで、研磨剤をあまり使わなくても、効率的に汚れを落とせるよう配慮された歯磨き粉も登場してきました。しかし、現在の日本では、歯科医院でのホワイトニングに使われる「ホワイトニング剤」を歯磨き粉に配合することは、薬事法で認められていないのが現状です。

歯科医院のホワイトニングは守備範囲が広い

歯科医院で行っているホワイトニングは、ホワイトニング剤を使って歯の黄ばみの原因であるエナメル質内の色素を無色透明に分解し、歯の結晶構造を変化させることにより、白く変化させます。

やり方は2種類あり、
・歯科医院で、歯の表面に薬剤(ホワイトニング剤)を塗って行う「オフィスホワイトニング」
・歯科医院で作った専用のマウスピースに薬剤を塗布流し、自宅で装着する「ホームホワイトニング」
に分かれています。

どちらを選ぶかによってホワイトニング剤の種類は異なりますが、歯が白くなる原理は同じです。着色による汚れだけでなく、加齢や元々の色が黄ばみの原因である場合も、一定の効果が期待できるのが特徴です。また、セットでクリーニングも行ってくれる歯科医院がほとんどですので、歯についた汚れや歯石もいっしょに落とすことができます。

なお、使用するホワイトニング剤の種類や濃度の違いから、方法によって結果が出るまでに必要な時間や効果の持続時間に違いが出ます。

オフィスホワイトニングは、
1. 歯のクリーニングを行う
2. 歯の表面にホワイトニング剤を塗り、プラズマやレーザー、LEDなどの光を当てて薬剤を活性化させる
という流れとなります。1回約1時間の施術で効果が実感できますが、持続時間は3~6ヵ月と短めなのが特徴です。

対して、ホームホワイトニングは、
1. 歯科医院でカウンセリングを受け、専用のマウスピースを作成する
2. 歯科医院でクリーニングを受ける
3. 自宅でホワイトニングを行う(決められた時間と期間、継続します)
4. 歯科医院でメンテナンスを受ける
という流れで進み、1回1~6時間程度(薬剤の濃度により時間は変わります。)マウスピース装着を1~2週間続ける必要があります。ただし、その分より白く透明な色合いになり、1~2年と効果も長持ちします。

歯を白くするには、黄ばみの原因に応じたホワイトニングを行うことが大切です。
黄ばみの原因がわからないままに、ホワイトニング効果をうたう歯磨き粉を使っても無意味なことがありますので、まずは歯科医院で相談してみることをおすすめいたします。

  • コラムに掲載されている施術などは、必ずしも当院でご提供してるサービスに限りませんので、ご了承ください。