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受け口(反対咬合)は歯列矯正で治りますか?

2016.11.03

受け口(反対咬合)

歯並び

歯列矯正

こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。
「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」は、私・中村が「歯科医師としてのホンネ」で皆様の疑問にお答えしたり、歯やお口元の美容・健康に役立つ情報をお届けしたりしていくコラムです。

さて、今回は「受け口(反対咬合)は歯列矯正で治りますか?」という患者様からのご質問にお答えしたいと思います。

受け口(反対咬合)とは?

受け口とは、下の前歯が上の前歯より前に来ている噛み合わせのことをいいます。
私たちが上下の歯を合わせたとき、通常は上の前歯のほうが下の前歯より前に来ますが、受け口の人はそれが反対になっているのです。このため、「反対咬合(はんたいこうごう)」ともいわれます。
また、受け口は上顎よりも下顎のほうが前に出ることから、「下顎前突(かがくぜんとつ)」といわれることもあります。

受け口の要因としては、下顎骨の過成長や上顎骨の劣成長などの骨格上の問題や、上の歯が内向きに生え、下の歯が出っ歯になっている場合など、いくつか挙げられます。
ほかにも、骨格的な遺伝や歯の発達障害のほか、小児期のおしゃぶりや口呼吸といった生活習慣が要因として考えられます。

受け口の機能面の問題

受け口が著しい場合、機能面での心配があります。
まず、心配されるのは嚥下障害です。前歯の噛み合わせが上下逆になっているため、物をうまく噛み切ることができません。
前歯でうまく噛み切れなくても、奥歯でしっかりすりつぶしてから飲み込めばいいのですが、著しい受け口の場合、奥歯の噛み合わせも良くないことが多いのです。その結果、食べ物を十分に噛まないまま丸呑みにする習慣がつきやすいでしょう。

また、前歯がうまく機能しないため、奥歯に負担がかかり、経年とともに奥歯の早いすり減りが心配されます。
さらに、こうした噛み合わせは顎関節に負担がかかり、顎関節の痛みや顎関節症につながる可能性も考えられます。

そして、サ行などの発音がうまくできない、発音障害となる可能性も考えられます。

次に、審美的に考えた場合、軽度の受け口は本人の個性、あるいは顔全体のバランスによってはチャームポイントになることもあるでしょう。
しかし、受け口が著しい場合、顔を横から見たときに下顎が前方に突き出した、いわゆる「三日月顔」になってしまう可能性があります。この三日月顔が、容姿上の大きなコンプレックスとなってしまうことも考えられます。

受け口の治療法と矯正方法は?

受け口は、小児期のころ、乳歯が生えてきた段階で見つかることが多いでしょう。
また、もう少し早い段階から、上顎がくぼんでいる・下顎が前に飛び出しているなどの特徴から、受け口になることが予見できる場合もあります。

このような早期発見の場合、受け口は上顎拡大装置やマウスピースなどの矯正装置の装着や生活習慣の改善、「MFT」と呼ばれる口のまわりの筋肉を鍛える筋機能療法などによって、矯正・改善を図ることができます。

いつ治療を開始するか、どのような治療法を採択するかは、本人の状態次第なので一概には言えませんが、成長期は一般的に上顎よりも下顎のほうが発達しやすいため、成長するにしたがって受け口が進行する可能性が考えられます。

「乳歯の受け口は自然に治癒することもある」といわれますが、治療をする・しないにかかわらず、小児矯正の専門医などを受診しておくことをおすすめします。

さて、成人になってからの受け口の治療法としては、「歯列矯正」「前歯のクラウン」「下顎の手術」が挙げられます。

まず歯列矯正についてですが、骨格的に大きな問題がなく、歯の生えている位置や角度が原因で受け口となっている場合、ブラケットやマウスピースなどを使った歯列矯正により、改善できる可能性があります。
ただし、下の歯が大きく、前歯を引っ込めた場合にすべての歯を並べきれないケースでは、抜歯が必要になることもあるでしょう。

次に、わずかな受け口で歯並びが悪い場合は、前歯を削り、神経を取って中の土台で歯の向きを変えてクラウンをかぶせることで受け口を改善するという方法があります。

また、顎の骨格上の問題で受け口になっている場合は、上記のような方法では対応できないかもしれません。この場合は、外科的な手術で下顎の位置を修正(後ろに引っ込める)したり、あるいは大きすぎる下顎の骨を切る手術が必要になったりすることもあります。

正しい知識に基づく、最も満足度の高い治療法を

今回は受け口についてお話しさせていただきました。
「受け口は歯列矯正で治せますか?」との患者様からのお問い合わせに対し、

  • 受け口とは何か?
  • 受け口の原因は?

などについて説明した上で、軽度の受け口は本人の「個性」とみなすこともできることや、著しい受け口は機能面での問題が心配されること、本人にとって容姿上のコンプレックスになる可能性もあることなどをご説明しています。

また、受け口は小児期に発見できることから、できるだけ早く専門医にかかり、矯正やトレーニングによる改善を図ったほうがいいということについてもご提案させていただきました。
そして最後に、成人になってからの受け口の治療法について説明させていただいています。

このように、説明が段階的で複雑になってしまったのは、一口に受け口といっても、原因が歯にある場合と顎にある場合とでは、状況が大きく異なるためです。
おもな原因が歯にある場合は、歯列矯正によって治療・改善が期待できるのですが、顎の骨にある場合は歯列矯正だけでは対応できません。このため、「受け口が歯列矯正で治るか?」といわれても、患者様のお口の状態を拝見しないと返事のしようがないのです。

受け口の治療は、歯だけではなく、上顎・下顎の骨を含め、お口の状態全体を考えながら治療法を選択する必要があります。
ですから「健康な歯をできるだけ抜かない・削らない」をモットーにしている当院でも、場合によっては歯を削ってクラウンにする方法などをご提案させていただく可能性があるでしょう。

最終的にどのような治療法を選択するかは患者様のご意思次第です。
ですからそのまえに、

  • 受け口の原因はどこにあるのか?
  • どうすればご希望の状態に近づけることができるのか?

といった正しい知識を身に付けていただき、特定の治療法にこだわらず、最も満足度が高いと思われる治療法をお選びいただければと思います。


  • コラムに掲載されている施術などは、必ずしも当院でご提供してるサービスに限りませんので、ご了承ください。