こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、本当にありがとうございます。皆様のお口元の健康と美しさにお役立ていただける情報をお届けしていければと思っております。
さて、今回のテーマは「ステインケア」。
ステインとは、歯の黄ばみや黒ずみなど、着色汚れの原因となる沈着物質のことです。なぜステインが発生するのか、どうすればステインの付着を防ぐことができるのか、そしてもしステインが付着してしまったらどうすればいいのかについて、審美歯科医師の視点からホンネでお話ししていきます。
目次
歯の着色汚れの原因となる食べ物・飲み物
歯の着色原因となる飲食物には赤ワイン、コーヒー、ブルーベリー、紅茶など、さまざまな物がありますが、直接ステインの原因になりやすいおもな成分、そしてその成分を含む代表的な食べ物として次のようなものが挙げられます。
人参やほうれん草などの緑黄色野菜
ほうれん草やにんじんなど、体に良い緑黄色野菜。実は緑黄色野菜の濃く鮮やかな色はビタミンB群の色によるものが多く、ステインの原因になりやすいのです。
コーヒー、紅茶、緑茶
コーヒーや紅茶、緑茶は着色汚れの原因になることで有名ですよね。これらをよく飲む人は、マグカップに茶渋がついているのを見たことがあるでしょう。このマグカップに茶渋がつく現象が、歯でも起きているのです。渋みを感じる植物由来の成分(ポリフェノール)が着色汚れの原因になりますが、だからといって「飲むな」というわけではありません。飲んだ後は正しいステインケアをすれば、着色汚れを気にせずにティータイムを楽しめますよ。
ちなみにポリフェノールはバナナや大豆にも含まれています。
ワイン
ポリフェノールを多く含む赤ワインは、歯の着色汚れを引き起こす原因として知られています。では、白ワインは大丈夫?と思ってしまいそうですが、白ワインも歯に着色する成分を含んでいるのです。白ワインにはポリフェノールの一種であるタンニンが含まれており、この成分は歯を変色させる原因。タンニンは口に含んだ時に渋みを感じ、コーヒーや玉露、柿にも多く含まれています。
ベリー類全般
ブルーベリーなどの色の濃いベリー類に多く含まれるアントシアニンという濃い色素は、歯の着色汚れになります。ブルーベリーだけではなく、クランベリーやラズベリーにも多く含まれており、ベリー系を食べた後は口をすすぎましょう。ちなみに、「ブルーベリーが目にいい」といわれるのもこの成分によります。
玉ねぎ、ニラ、ニンニク
タマネギやニラ、ニンニクなどに含まれている、刺激臭と辛みのもととなる硫黄化合物もステインの原因になりやすい性質を持っています。
カレー、ケチャップ
カレーやケチャップに含まれるスパイスは、歯の着色汚れの原因になります。特にクミンやターメリックは時間が経つとともに歯を黄色く変色させるので、食べた後はマウスウォッシュや歯磨きをしてオーラルケアを行いましょう。
チョコレート、ココア
子供たちが大好きなチョコレートやココアも、残念ながら歯を着色させる成分が含まれています。カカオポリフェノールと呼ばれる成分が歯を変色させるのですが、これはカカオ濃度が高ければ高いほど多く含まれています。最近はカカオ濃度が高いチョコレートは体にいいとされていますが、歯の着色原因となるので、控えた方がいいかもしれませんね。
これらを見ておわかりのとおり、ステインの原因となる物質には「体に良いとされる物」「体に必須な栄養素(ビタミンB群など)」が多いため、「ステインの原因物質となるものは一切食べない」というわけにはいきません。ただし、赤ワインやチョコレートなど、「歯科衛生及び美容の観点からも、あまり食べ過ぎないほうが良いのでは?」と思われる食品も含まれています。
原因物質が「ペリクル」と結びついて歯に付着!
ステインの原因となりやすい食べ物は、色が濃い物が多く、それらの色素がそのまま歯に付着するのだと考える人も多いかもしれません。ところが、そうではないのです。
もちろん、色素がそのまま歯に付着する場合もありますが、単に色素が歯の表面に付着しただけでは、落としにくい頑固なステインにはなりません。
実は、ステインが発生するメカニズムには、歯の表面を覆う「ペリクル」という被膜が深く関わっています。
ペリクルは唾液に含まれるタンパク質から作られた粘り気の強い被膜で、厚みはわずか0.1~1マイクロメートル(1マイクロメートルは0.001ミリメートル)くらいしかありません。ペリクルは、歯の表面のエナメル質を酸から守るという大切な働きをしています。
しかしその一方、ペリクルの粘り気によって、虫歯菌などの細菌や食べカスが歯の表面にくっつきやすくなるという問題もあります。ペリクルにくっついた細菌はやがて食べカスをエサにして増殖し、歯垢(プラーク)を作ります。歯垢の中は細菌にとって非常に増殖しやすい環境であり、放置しておくと、歯の表面に「バイオフィルム」という強固な細菌の膜を形成します。これが虫歯や歯周病の大きな原因となってしまうのです。
また、ペリクルは上で説明した着色原因物質も吸着します。これらの原因物質がバイオフィルムの内側に入り込んでしまうと、歯磨きなどでは簡単に取れなくなります。これがステインの正体です。
ステインは時間の経過とともに、エナメル質の表面にある微細なチューブ状の穴に入り込んで(沈着して)しまって、除去がますます困難になります。
ちなみに、ペリクルはそれほど強固な被膜ではありませんから、歯磨きをしっかり行えばはがれ落ちます。そして、60分ほどで新しいペリクルが歯の表面を覆います。
ステイン予防のセルフケアとは?
ステインとペリクルの関係、そしてステインが歯につくメカニズムが頭に入ってしまえば、ステイン予防はそれほど難しくはありません。色素がまだペリクルに貼り付いているあいだに、そして歯垢が作られるまえに歯磨きをして、古いペリクルごと色素を洗い流してしまえばいいのです。
食事の度に、あるいはステインの原因になりやすい食べ物を食べたらすぐに歯磨きをするのが理想ですが、それができない場合は食後に水で口をゆすいだり、ガムを噛んだりすることでも一定の効果が期待できます。ただし、少なくとも1日1回は歯垢を落とし切るつもりで本格的な歯磨きをして、デンタルフロスなども使ったオーラルケアをおすすめします。
なお、「ステインケア」や「ステインオフ」を謳った市販の歯磨き剤や電動歯ブラシなどを使用することは問題ありませんが、研磨剤を多く含んだ歯磨き剤の使用やゴシゴシ歯磨きの習慣はエナメル質を傷つける原因となりステインの再付着を助長することになる為おすすめできません。
ステインが定着してしまったら?
先ほども説明したとおり、いったん歯に定着してしまったステインはセルフケアでは取ることができません。歯科医院に行って専門の機器を使ったPMTCを受けるか、審美歯科などが提供している歯のクリーニングを受けてください。
ちなみに当院では、患者様のニーズやご要望に応じて「スタンダードケア」「ステインケア」「デンタルヘルスケア」「ビューティーケア」の4コースのクリーニングをご用意しております。
ステインケアコースでは、タバコやコーヒーなど特に頑固なステインも除去し、ステインの再付着を防ぐための施術も行います。
汚れるまえに美しさを保ち続けることが一番!
今回はまず、ステインの原因となりやすい食べ物やステインが歯に付着するメカニズムをご理解いただき、セルフケアでできるステイン予防についてもご紹介させていただきました。
そして、いったん定着してしまったステインはセルフケアでは除去できず、PMTCやクリーニングが必要であることもぜひ覚えておいていただきたいと思います。
とはいえ、歯は汚れてからキレイにするよりも、汚れるまえの美しさをずっと保っていただくに越したことはありません。定期的な歯のクリーニングを始めてみてはいかがですか。
執筆責任者
院長 中村
日本歯科大学新潟生命歯学部卒業。一般開業医での勤務、2020年よりデンタルサロン・プレジール歯科医院長就任。
従来の歯科の考え方にはなかった「健全な歯を削らずに」得られる審美歯科がここにあります。
当クリニックを訪れてくださった方に、笑顔に自信を持っていただくことを一番に考え、対応させていただいております。