歯並びの悪さは遺伝するの?

皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、川邉(かわべ)です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、ありがとうございます。このコラムが皆様のお口の美容と健康の維持に、少しでも役立てば幸いです。

今回のテーマは「歯並びの悪さと遺伝」についてです。ご両親にとって、お子様の歯並びの悪さは大きな悩みの種。特にご自身の歯並びが悪い(悪かった)場合、「子供に遺伝するのでは?」と心配されている方も多いのではないでしょうか。ある女性読者の方からご質問をいただきましたので、審美歯科医師として、ホンネで率直にお話ししたいと思います。

Q:歯並びの悪さは遺伝するのでしょうか?

私は元々歯並びが悪く、中高校生のあいだはずっと凸凹の歯がコンプレックスでした。そこで、大学に入学したころから矯正を始め、卒業時にはきれいな歯並びを手に入れることができました。今は結婚をして娘がいるのですが、社会人になってから知り合った夫は、私が歯列矯正をしていたことを知りません。娘は今6歳で、顔は私にとても似ていて、小さいころの私ほどではありませんが、多少歯並びが悪い気がします。夫は元々歯並びが良いので、娘の歯並びは私に似てしまったのではないかと心配です。まず前提として、歯並びの悪さは遺伝するのでしょうか? また、娘が成長するともっと歯並びの悪さが目立ちそうですが、できるだけ早いうちに歯列矯正を受けたほうが良いのでしょうか?

Y子

A:歯並びは遺伝の影響も受けますが、生活習慣によって決まる部分も大きいです

Y子様、ご相談ありがとうございます。
ご自身が歯並びで苦労された経験があればこそ、お子様の歯並びの悪さは気になりますよね。お顔がそっくりの娘さんということもあって、遺伝の影響を心配するお気持ちはとてもよくわかります。

結論から申し上げますと、歯並びは遺伝の影響を受けますが、それだけで決まるわけではなく、生活習慣や食育環境と深い関係があります。また、歯列矯正を始めるのに適した時期は人によって違い、早く始めれば高い効果があるというものではありません。実際にお子様を診察していないため正確なことは申し上げられませんが、歯並びの乱れが気になってからでも良いのではないかと思います。それでも気になるようでしたら、早いうちに小児歯科または矯正歯科に相談されることをおすすめします。

歯並びは遺伝と生活習慣双方の影響を受ける

続いて、歯並びの形成に関わる要因について、まとめて紹介しましょう。子供は容姿や骨格、体質など多くの要素を親から受け継ぎます。もちろん、歯の大きさや質、顎の骨の形や大きさなどは、親から子に受け継がれますから、これらが歯並びに影響を与えることは間違いありません。例えば、顎の骨が小さく歯が大きい場合は、顎の大きさに対して歯が大きすぎることになります。その結果、歯がきれいに並ばず、でこぼこになってしまう可能性が高いといえるでしょう。

しかし、歯並びの良し悪しは遺伝要素だけで決まるわけではありません。例えば、顎の骨の発達は小さいころから硬い物もしっかり噛んで食べる習慣の有無によって変わりますし、舌の癖や口呼吸の癖も歯並びに影響を及ぼすことがわかっています。遺伝と生活習慣の両方が、歯並びに影響を与えているのです。
子供の歯並びが悪いと遺伝の影響が心配になりますが、生物学的な遺伝ではなく、いっしょに暮らしている中で「歯並びに悪影響を与える親の生活習慣」が知らず知らずのうちに引き継がれ、歯並びに影響を与えている場合もあります。遺伝と生活習慣のどちらが原因であるかにより対処法も変わってきますので、お子様の歯並びが気になるようでしたら、まずは「何が歯並びの悪さの原因」になっているか、歯科医師に診断してもらうのが一番です。

歯並びを悪くしてしまう生活習慣の代表例

歯並びを悪くする生活習慣には次のようなものがあります。

口呼吸

口呼吸を続けていると、知らないうちに舌を前に出したり、本来あるべきポジション(上の前歯の少し後ろにあるやや膨らんだ部分)より低い位置に置いてしまったりする癖がつきやすくなります。舌の位置が悪いと上顎と下顎の成長のバランスが崩れ、上顎前突(いわゆる「出っ歯」)になりやすく、口の周りの筋肉の発達にも影響を及ぼします。
歯並び以外に生じる弊害として、下記の事が挙げられます。
口の中が乾燥する事により、唾液の殺菌作用が低下し、①口臭がきつくなる。②歯の表面に着色が付きやすくなる。③虫歯が出来やすくなる。また、最近やウイルスなどが直接口に侵入する為、アレルギーも生じやすくなります。
先ずは、口呼吸の原因となる鼻の病気を疑い、耳鼻科を受診してみてはいかがでしょうか。

頻繁に頬杖をつく、寝るときにうつ伏せや横向きに寝る、噛むときに右または左ばかりで噛んでしまうというような癖は、いずれも歯並びに悪影響を与えます。また、5歳を超えても指しゃぶりをする癖があると、前歯の位置や噛み合わせがずれてしまう可能性がありますし、唇を内側にすぼめる癖があると前歯が内側に押され、これも歯並びに悪影響を及ぼします。下唇を噛む癖や食べ物以外を噛んでしまう癖がある場合も同様です。

食生活

軟らかい物ばかり食べていたり、よく噛まないで食べたりすることが習慣になってしまうと、口の周りの筋肉が十分に発達せず、顎の骨の成長が妨げられてしまいます。顎が十分大きくならないと、歯が並ぶのに必要なスペースが取れないため、歯列がでこぼこになることにもつながります。

虫歯の放置

乳歯の虫歯は「どうせ生え変わるから大丈夫」と思いがちですが、痛みを避けるために噛み方に変な癖がついてしまったり、硬い食べ物を避けるようになったりして、顎の骨の成長に悪影響が及んでしまうことがあります。また、歯が自然に生え変わるよりも早く抜けてしまうと、周りの歯が移動して永久歯が生えるためのスペースがなくなってしまいます。大人の虫歯同様、子供の虫歯も放置することでさまざまな悪影響がありますから、早めに治療するようにしてください。

矯正の開始時期は歯科医師に相談を

子供は成長過程にありますので、骨の発達バランスを整えやすく、適切な歯列矯正を行えば効果が期待できます。歯並びや骨格の状態により、早く矯正を始めたほうが良い場合もあれば、成長を見守ったほうが良いこともあります。その判断は歯科医師が診察してみないとわかりませんので、お子様の歯並びが気になるようでしたら、まずは小児歯科か矯正歯科に相談するのがおすすめです。

ご紹介したように、歯並びの良し悪しは遺伝で決まる要素もありますが、生活習慣とも深い関わりがあります。また、歯列矯正も早ければ早いほど良いというものではありませんから、まずは生活習慣の見直しを行ってみてください。