実は「矯正」ではない場合も!? 歯列矯正の期間は短くできる?

  • 実は「矯正」ではない場合も!? 歯列矯正の期間は短くできる?

こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、川邉(かわべ)です。
「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科”ここだけの話”」をご覧いただき、ありがとうございます。このブログでは、私のこれまでの経験や患者様のお話をもとに、気になるけどなかなか聞けない歯の話や、口もとの美しさにつながるヒントをお届けしています。

今回は、歯列矯正をするときに「費用」や「結果」と同じくらい気になる「期間」についてお話ししたいと思います。
当院では、審美歯科として「患者様専用の創作歯を貼る」という方法によって、短期間で美しい歯並びを実現しておりますが、「歯を動かす」治療である歯列矯正は、基本的に気長に取り組まなければならないものです。しかし、最近では「スピード矯正」「短期間矯正」といった単語をよく聞くようになり、実際にそうした矯正を行っているという歯科医院を見かけることも増えてきました。
矯正装置の違和感も昔に比べて少なくなり、マウスピース矯正など目立ちにくく負担の少ない矯正法も出てきたとはいえ、「できることなら早く矯正を終わらせたい!」「装置を着ける期間を短くしたい!」という方は少なくないでしょう。
本当に、矯正期間の短縮は可能なのでしょうか。

歯列矯正に必要なのは、「最適な力をかけ続けること」

そもそも歯列矯正とは、歯に力が加わると「歯槽骨」という顎の骨の中で、骨の新陳代謝が起き、骨が溶けたあとに歯が動いて、動いたあとに新しい骨ができるというしくみを利用した治療法です。必要な期間は、元の歯の状態と最終的に目指す形にもよるため、例えば「歯の隙間を埋めたい」といった比較的軽度の矯正であれば、マウスピースを使った矯正で、1年ほどで終わる場合もあります。
しかし、基本的には、一定の力を加え続けることによって歯並びを動かすわけですから、そう簡単ではなさそうですよね。矯正が広範囲に及ぶ場合や、難度が高い場合などはなおさらです。

それでは、強い力をかければ、歯は早く動くのでしょうか?
歯列矯正により歯が動くスピードは、1ヵ月あたり0.3mmほどだといわれています。また、歯の種類や状態によって、歯の動くスピードに合った最適な矯正力というものがあり、それを超えても、また弱すぎても、歯は動きません。特に矯正力が強すぎると、歯槽骨の破壊と再生が停滞し、歯の動きも鈍ってしまいます。また、歯の根が吸収されて短くなることがあります。
こうした理由から、矯正に長い時間がかかるのはやむを得ないことであり、動かした歯を安定させる保定期間も必要であるということが歯科矯正における共通認識とされてきました。

「短時間で矯正できる」のはウソ? ホント?

ここで気になるのが、最近よく見かける「矯正の期間が短縮できる」という器具や施術方法の内容とその真偽です。近年、よく見かける「通常より短期間で終了する」「結婚式までにキレイになれる」という矯正法は、いったいどのような治療内容なのでしょうか。

実は、「短期間矯正」「スピード矯正」などといわれる治療法は、厳密には「矯正」ではなく「外科的治療」なのです。いくつか例を挙げて見てみましょう。

1. インプラント矯正

インプラントは、失った歯の代わりに人工の歯を埋め込む治療のことです。「インプラント矯正」はその技術を利用した矯正で、顎の骨に入れた矯正用のインプラントを支点に歯を引っ張るしくみです。1990年代後半から行われ始めた矯正法で、当初は一方向にしか動かせないという欠点がありましたが、治療法そのものや補助装置の開発・改善によって、可動域は飛躍的に広がりました。
インプラントを埋め込むための外科手術が必要になりますが、顎の骨にしっかりと支えられた固定源を得られるため、効率良く速く歯を動かす事が出来ます。埋め込む深さは2~3mm程度と浅く、矯正が終わって取り出せば跡も残りません。

2. コルチコトミー

顎の骨の表面は、皮質骨という非常にかたい骨で覆われています。この皮質骨を一部きりとり、歯が動きやすい状況を作ってあげる方法がコルチコトミーです。矯正による痛みは、最適な矯正力以上の力が歯に加わることによって起こりますが、コルチコトミーは小さな力で歯がしっかり動きますので、矯正中の痛みを確実に減らすことができます。しかも治療期間は従来の半分! 治療後は切り取った骨が新たに結合するため、より安定した歯列になります。

3. ヘミオステオトミー

コルチコトミーの発展版です。予め歯に矯正装置を装着した上で、皮質骨の下にある柔らかい海綿骨に切り込みを入れて歯を動きやすくする方法です。、矯正装置の力と人間の治癒力を併用することでより短期間での矯正を可能にしました。手術後に若干の腫れはありますが、当日中に帰宅でき、入院などの必要はありません。
歯列矯正と口腔外科、歯周外科、インプラント科のすべてに精通した医師が一人で行うことが手術成功のポイントであるといわれますが、最新の技術のため、習熟した医師が少ないことが難点です。

ほかにも、外科的治療ではなく、短期間で治療が可能なものに「セラミック矯正」があります。
これは、歯並びを改善したい歯及びその周りの歯を削って、セラミックをかぶせるというものです。とにかく早期に歯並びを治したい、治療の過程を目立たせたくないという方に最適です。

しかし、全体的な歯並びを治したいという場合や、重度の矯正が必要な症例の場合には、このようなセラミック矯正は一時的に美しい歯並びを手に入れても再び歯が動いてしまう可能性があります。外科処置は不要で短期間で終了するため非常に魅力的に感じますが、決して簡単な治療ではないため、豊富な症例数を有する医師に任せる必要があります。

短期間での矯正はリスクも大きい!

結論として、「できるだけ早くきれいな歯並びを手に入れたい」という場合、大掛かりな外科的手術をすれば可能であるといえます。また、一般的な矯正だけでは治療できない重度のケースにも、外科処置を伴う矯正は有効でしょう。しかし、手術である以上、医師の技量に左右される部分が大きいこと、リスクが伴うことは覚悟しなければなりません。

また、従来の矯正法とほぼ同じ理論で行われるマウスピース矯正は、矯正後のイメージを3D画面で確認しながら微調整を加え、理想に近い完成形を医師と患者様が共有した上で治療を進めることができますが、外科的処置を伴う場合には事前にイメージを描きにくいという点にも注意しましょう。

従来の矯正法のデメリットを解消すべく生まれた新しい手法であることを念頭に置き、信頼できる歯科医院にしっかり話を聞いた上で選択することが大切です。