他人に見えない歯の裏側矯正(舌側矯正)

こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、川邉(かわべ)です。

いつも「ホンネで薦める審美歯科ココだけの話」をお読みくださり、ありがとうございます。

開業以来、多くの患者様にご利用いただいている当院は症例数も3000件を超え、これまで以上に「患者様に心から喜んでいただける診察・施術を」と新たな情熱を燃やしています。

さて今回は、歯列矯正の中でも「矯正装置が見えにくい」ということで注目を集めている裏側矯正(舌側矯正)について、歯科医のホンネのお話をさせていただきたいと思います。

裏側矯正(舌側矯正)とはどのような矯正法か?

裏側矯正(舌側矯正)の特徴について理解できるように、ここでは最も一般的な歯列矯正法と思われる、ブラケットによる歯列矯正(表側矯正)と対比させながら説明していきましょう。

従来の一般的な歯列矯正は、歯の表側に「ブラケット」という矯正装置を貼り付け、それをワイヤーで固定し、歯に対して動かしたい方向に圧力をかけ、長い時間をかけてゆっくりと歯を移動させながら歯列矯正を行います。歯列を整えるために十分なスペースがない場合は、抜歯して歯を移動させるスペースを作ることもあります。

これに対し、裏側矯正(舌側矯正)は、ブラケットを歯の裏に接着し、歯の裏側(舌側)からワイヤーで引っぱることにより歯列矯正を行っていきます。英語で「舌の~」は「リンガル=lingual」といいますから、裏側矯正のことを「リンガル矯正」と呼ぶこともあるようです。

歯の裏側に装着するブラケットは「リンガルブラケット」といいますが、一般的なブラケットよりも歯に対して強い接着力が必要とされるため、従来のリンガルブラケットではレジン(接着用樹脂)部にある程度の厚みが必要でした。こうしたことから、裏側矯正は一般的なブラケットによる歯列矯正よりも患者の違和感が大きいと考えられることが多かったようです。またワイヤーが舌側にあることから、舌を傷つけてしまうというケースもみられました。

治療自体の痛みは表側・裏側ともにそれほど違いはありませんが、こうした舌の痛みや傷は裏側矯正に特有のもので、痛みというよりも口中の異物感・不快感・発音のしにくさ(滑舌の悪さ)といった、総合的な苦痛という意味では裏側矯正のほうが大きいかもしれません。

しかし、近年は高性能な矯正歯科用接着剤が開発されるなど技術の進歩により、これらの異物感や不快感、発音のしにくさといった問題も徐々に解消されてきています。

また、「インコグニート」というシステムでは、患者様の一人ひとりの歯形を3Dスキャナーで読み取ることで歯の裏の形状にフィットするブラケットをつくり、歯と接着する面を薄くすることで口内の異物感や不快感を低減させるといった工夫がされています。

裏側矯正(舌側矯正)のメリット・デメリット

さて、裏側矯正と一般的な歯列矯正を比較した場合のメリット・デメリット、そしてリスクについてお話ししたいと思います。

裏側矯正のメリット

まずメリットですが、裏側矯正を選ぶ人は、なんといっても「矯正装置が目立ちにくい」というメリットにひかれて選ぶ方が多いのではないでしょうか。
一般的なブラケットも最近は目立ちにくいものが多くはなっていますが、やはり近くで口元を見れば矯正装置を装着しているのは一目瞭然です。この点では裏側矯正のほうが確かに矯正装置は目立ちにくいでしょう。

そして、これは歯の形状や状態によっても異なりますから一概にはいえませんが、一般的には「裏側矯正のほうが虫歯になりにくい」といわれています。

なぜなら歯の裏側のほうが唾液の循環によって虫歯菌が繁殖しにくいと考えられるからです。ただし、清掃状態が悪いと唾液による自浄作用があっても虫歯になるリスクはあります。

裏側矯正のデメリット

次に裏側矯正のデメリットですが、一般的なブラケットを使用した表側矯正よりも費用が高額になりがちという課題があります。もちろん医院によって価格には違いがあるでしょう。それでも相場としては表側矯正の1.5倍くらいの費用を見込んでおく必要があるでしょう。

これは、「ワイヤーを歯の内側に配置するために高い技術と手間がかかる」と同時に「裏側矯正には歯科医師の高度な技術や経験が必要だから」ということが理由にあります。気になる治療期間ですが、一般的には「表側のほうが短期間で済む」ともいわれます

知っておきたいリスクと注意点

裏側矯正でも表側矯正でも、歯列矯正には一定のリスクがあり、注意してもらいたい点もあります。このことをお話ししておきたいと思います。

まず、虫歯リスクについてですが、ここまで「裏側矯正のほうが虫歯になりにくい」といわれているということを書いてきました。しかし、これは表側矯正と比較した場合の話であって、口内に長期間異物(ブラケット・ワイヤー)を装着しつづけるわけですから、やはり毎日のていねいで適切なケア(ブラッシング)と、通院するごとに歯科医師のプロフェッショナルクリーニングは受けるべきでしょう。
矯正のクリニックによっては、矯正を始める前に適切なブラッシングが出来る様になるまでは、矯正装置を装着しないようです。このように自分で虫歯のコントロールを行う事はとてもたいせつな事です。

また、裏側・表側とも、歯茎からの出血や炎症には十分注意してください。これもていねいで適切なブラッシングにより、ある程度は予防が可能です矯正装置を外した後、決められた期間、保定装置(リテーナー)を装着しましょう。これを怠ってしまうと、後戻りの原因となります。

矯正治療の判断は慎重に

裏側矯正を表側矯正と比較した場合、費用面を除いては特にリスクの差があるとはいえません。ただし、口内の異物感や不快感については、近年軽減されたとはいえ人それぞれ感じ方が大きく違うと思われます。

歯列矯正は何年にもわたって継続する治療です。矯正治療を受けるか受けないか、または表側矯正にするか裏側矯正にするか、また抜歯が必要かどうかといった判断は、歯科医師のカウンセリングをしっかり受け、納得いくまで話し合ってからするべきでしょう。
実は当クリニックにご来院される患者様の中には、歯を抜いてしまってから矯正装置の違和感等で、矯正を続ける事を断念されてしまった方もいるからです。

当院では、美しい歯並びを求めて歯列矯正をしたいとお考えの患者様に対して、「抜かない・削らない・痛くない」施術法として「ティーシーズ」をおすすめしています。

これは患者様の歯を抜いたり削ったりするのではなく、患者様の歯に合わせて人工の歯を作成し、これを歯の表面に貼り付けることで歯並び・歯の色・歯の形を一度に美しくできるという施術法です。歯列矯正の様に歯を動かす方法ではないので、咬み合わせを治したい、出ている歯を引っ込めたい等の症例には向きませんが、ティーシーズであれば歯列矯正のように長期的な施術を受ける必要もありません。もし「元に戻したい」と思ったらティーシーズをきれいにはずすことも可能です。

健康な歯を抜いたり削ったり、あるいは力を加えて移動させたりするといった矯正方法は、身体に負担をかけます。いま「歯列矯正をしようか?」と検討している人は、「抜かない・削らない」施術も選択肢の1つとして検討してみてください。