未来の自分の歯を守る予防歯科と、自宅でできるケアの方法

  • 未来の自分の歯を守る予防歯科と、自宅でできるケアの方法

皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、川邉(かわべ)です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、ありがとうございます。このコラムでは毎回違うテーマについて、皆様のお口の美容と健康に役立つ情報をお伝えしています。

今回ご紹介したいのは、近年、歯科治療の本流になりつつある「予防歯科」についてです。これまでの日本では、虫歯や歯周病になってから歯科医院で治療を受ける対症療法が中心でした。しかし、一度削った歯は治療しても元には戻らず、それだけ弱くなってしまうものです。再び虫歯になってしまうことも多く、再治療を繰り返した末、最終的には抜歯になるケースも珍しくありませんでした。そこで、そもそも虫歯や歯周病にならないようにする予防歯科という考えが生まれ、徐々に浸透しつつあります。今、注目の予防歯科の基本的な考え方と実践をご紹介しましょう。

以前は「悪くなったら治せばいい」が主流だった

予防歯科の考えが広まる前の日本では、「歯科医院は、歯が痛くなったら行くところ」というのが、歯科医師・患者さんの双方にとって共通の常識でした。多くの歯科医師が「自分の仕事は歯を治すこと」と考えていましたし、患者さんも「歯が悪くなったら治せばいい」「年を取れば歯がなくなり、入れ歯になるのは普通のことだ」と思っている人が多かったのです。
しかし、歯は一度治療すれば二度と悪くならないわけではなく、むしろ削って弱くなった分、虫歯や歯周病にかかるリスクは高くなります。そのため、小さな虫歯の治療から始まって、再度虫歯になり、また治療して、また虫歯になって…と再発と治療を繰り返し、最終的に歯を失うケースが非常に多く、30年前の1988年時点では、当時の平均寿命である80歳以上で20本以上の歯が残っている人の割合は7%に過ぎませんでした(厚生省「昭和62年歯科疾患実態調査」)。

人の歯は第三臼歯(親知らず)を除けば全部で28本。そのうち、20本以上あればほぼ満足して食事がとれるといわれています。そこで、多くの人が歯を失う現状を変えようと、1989年から厚生省(当時)と日本歯科医師会が中心となり、「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という「8020運動」が始まりました。その中で、「虫歯・歯周病は家庭でのセルフケア、歯科医院での定期健診・プロフェッショナルケアで防ぐことが重要」との意識が広まるにつれ、歯科医師と患者さんの意識も「治療よりまず予防が大切」という予防重視へと変わってきたのです。

現代の主流・予防歯科の考え方

予防歯科とは、虫歯や歯周病になってから治療することを考えるのではなく、そもそもならないように予防していきましょうという考え方です。具体的には、自宅で行う「セルフケア」と歯科医院で受ける「プロフェッショナルケア」を併用することで、口内を健康な状態に保っていくことが基本となります。
それぞれについて、もう少し詳しくご紹介しましょう。

自宅で行うセルフケア

自宅でのセルフケアは、予防歯科を実践する上で基本となるものです。
虫歯は、歯の表面についたプラーク(歯垢)の中に棲む虫歯菌が酸を出し、歯を溶かしてしまう病気です。歯周病は、プラーク中に含まれる細菌が出す毒素が原因で、歯茎が炎症を起こし、最終的に歯を支えている骨が溶かされてしまう病気ですから、セルフケアで重要なのはまず「毎日しっかりプラークを落とすこと」になります。同時に、「歯を強くするフッ素をなるべく歯に残す」「口内の細菌を増やさない」の2つもポイントとなります。具体的には、次のようなメンテナンスを行っていきます。

・プラークを落とす
歯の表面に付着するプラークは粘着性が高いため、うがいでは取り除くことができません。また、奥歯の噛み合わせや歯と歯のあいだ、歯と歯茎のあいだに溜まりやすいので、ブラッシングの際にはこの部分を意識して磨いていきます。歯ブラシはヘッドの小さい物(前歯2本分程度の大きさの物)でグリップが握りやすく、動かしやすい物を選ぶのがおすすめ。歯ブラシの毛先が届かない歯と歯のあいだは、デンタルフロスを使って磨きましょう。

・フッ素を歯に残す
歯磨き剤などに含まれるフッ素(フッ化合物)は、「酸により溶け出したエナメル質の修復を助ける」「エナメル質を強くして酸に溶けにくくする」「虫歯菌の働きを弱め、酸が作られるのを抑える」という3つの働きがあり、虫歯・歯周病予防に有効な成分です。長くフッ素を口の中にとどめておくために有効なのは、まず1回の歯磨きに3分以上の時間をかけてしっかり磨くこと。また、歯磨き後のうがいは、少量の水で1回だけにするのも良い方法です。

・細菌を増やさない
細菌の数が増えることは、虫歯・歯周病のリスク上昇に直結しますので、口内の細菌を増やさないことも大切です。細菌が最も増えるのは、唾液の分泌量が下がる就寝時ですから、寝る前には必ず歯を磨きましょう。

歯科医院で受けるプロフェッショナルケア

予防歯科の基本はセルフケアですが、それだけではどうしても磨き残しが出たり、自分に合った歯ブラシがわからなかったりというように限界があります。そこで、セルフケアをカバーするために必要になるのが歯科医院でのプロフェッショナルケアで、できれば3ヵ月に1度、少なくとも1年に1度は受けておくのがおすすめです。
プロフェッショナルケアの内容は、次のようなものになります。

・歯周病・虫歯の検査
歯周病や虫歯になっていないかを確認し、歯周ポケットの深さを検査します。

・クリーニング(PMTC)
歯科医師または歯科衛生士が専用の器具を使って行う歯のクリーニングです。自分では取りきれないプラークや汚れを除去できます。

・アドバイス
歯ブラシの選び方や使い方、食習慣などに関するアドバイスが受けられます。

・フッ素コーティング
歯の表面にフッ素を塗り、歯を強くします。

セルフケアを実践し、プロフェッショナルケアと併用していくことで、虫歯・歯周病のリスクは相当減らすことができます。
なるべく早期に(できれば今日から!)「治療よりまず予防」の予防歯科の考え方を取り入れて、実践してみてください。