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歯並びを最短できれいにする新しい歯列矯正の方法

2018.06.15

歯列矯正

皆様、こんにちは! デンタルサロン・プレジールの歯科医師、中村です。いつも「歯医者さんがホンネで薦める審美歯科ここだけの話」をご愛読いただき、ありがとうございます。このコラムでは毎回テーマを決めて、皆様のお口の健康と美容に役立つ情報をお伝えしています。

さて、今回お話ししますのは、歯科矯正にかかる期間を短縮できる「新しい矯正方法」についてです。歯科矯正を行うと見た目が整うだけでなく、噛み合わせが改善され顎の骨にかかる負担が減る、手入れがしやすくなって虫歯・歯周病にかかるリスクが減るなど、さまざまなメリットがあります。しかし、歯の移動には時間がかかるものです。症状にもよりますが2~3年はかかるのが普通で、その期間の長さからあきらめてしまう人も少なくありません。しかし近年では、この矯正期間を短縮するために、さまざまな方法が生まれています。
今回は、それらの新しい方法の特徴と一般的なブラケット矯正(歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな金属片を着け、そこにワイヤーを通して歯を引っ張る方法)との違いをご紹介したいと思います。

セラミック矯正は歯列矯正とは別物

短期間で歯並びを改善したい場合、よく知られている方法として「セラミック矯正」があります。
セラミック矯正とは、自分の歯を削った上でセラミック製の被せ物をすることで、歯並びや歯の色、形を整えるという方法です。歯を動かす治療を「歯列矯正」と呼ぶのに対し、「補綴(ほてつ)矯正」と呼ばれます。
セラミック矯正は、1ヵ月から数ヵ月と短い期間で治療が完了し、歯の色や形まで変えられるというメリットがありますが、歯を削る必要があるのが最大のデメリットです。健康な歯を削り、神経を取ってしまうため、歯の寿命を縮めることは避けられません。

このような補綴矯正に対し、歯列矯正はできる限り自分の歯を残すことが原則です。今回ご紹介するのは、この歯を動かす歯列矯正の中で、矯正期間を短縮できる治療法となりますので、混同しないようにしてください。

治療期間が短縮できる新しい歯列矯正法

治療期間が短縮できる歯列矯正方法は、「セルフライゲーションブラケット」「インプラントアンカー」「コルチコトミー」の3つがあります。

セルフライゲーションブラケット

セルフライゲーションブラケットは、ブラケット矯正に比べてより小さな力、摩擦が少ない状態で歯を移動させることで、治療期間の短縮を可能にした方法です。
それぞれの歯にブラケットを取り付けてワイヤーを通し、ワイヤーの弾力を利用して歯を移動させるのは一般的なブラケット矯正と同じですが、ブラケット矯正ではゴムやリングを使ってワイヤーをブラケットに縛り付けるのに対し、セルフライゲーションブラケットはワイヤーが自由に動く状態で歯に装着します。ブラケットとワイヤーが完全に固定されていないため、歯にかかる摩擦が減り、痛みも小さく、弱い力で早く歯を動かすことができるというわけです。

セルフライゲーションブラケットのメリット・デメリットは次のとおりです。

<メリット>
・従来のブラケット矯正より弱い力で歯が動くので、痛みが少ない
・移動する歯と歯の摩擦が少ないため歯が動きやすく、効率的に移動できるので、治療期間が短くて済む
・縛り付けない分、従来のブラケット矯正より矯正装置にプラーク(歯垢)が溜まりにくい
・無理な力を加えないので、治療後の後戻りが少ない
・従来の方法より通院回数が少なくて済む

<デメリット>
・従来のブラケット矯正に比べ、使用するブラケットが少し大きく目立ちやすい(ただし、透明の物など、目立たないブラケットも開発されており、年々小型化も進んでいる)
・価格が高い(選ぶブラケットの種類や歯科医院にもよるが、従来のブラケット矯正より1~2割は高いことが多い)

短縮できる期間は症例にもよりますが、およそ2~4割が目安です。

インプラントアンカー

インプラントアンカーは、顎の骨に「アンカーインプラント」と呼ばれるチタン製の小さなネジ(またはプレート)を埋め込み、それを矯正の支点とする方法です。一般的なブラケット矯正は、奥歯などの動きづらい歯を支点にし、ワイヤーでつながっている歯がお互いに引っ張り合うことで歯を移動させます。ただし、支点となる奥歯自身も引っ張られるため、加減を間違えると奥歯自体が前に動いてしまうリスクがあり、引っ張る力には限度があります。
一方、インプラントアンカーは骨と結合させたネジまたはプレートを支点としますので、支点自体が引っ張られる心配がなく、強い力で歯列全体を動かすことが可能です。その分、治療期間の短縮が見込めます。

インプラントアンカーのメリットとデメリットには以下のようなものがあります。なお、アンカーインプラントは、義歯治療で使われるデンタルインプラントとは別物ですのでご注意ください。

<メリット>
・治療期間が短縮できる
・インプラントを埋め込む位置により、歯を引っ張る方向が自由に調整できる
・歯列全体を動かせるので大掛かりな矯正が可能

<デメリット>
・矯正に加え、インプラントを埋め込む手術が必要になる
・インプラントの手術費用の分、割高になる(1本2万~10万円前後)

コルチコトミー

コルチコトミーは、外科手術で歯を支える歯槽骨に切れ目を入れることで歯が動きやすい環境を作り、矯正の期間を短くする方法です。単独で行うものではなく、ブラケット矯正などと併用することで効果を発揮します。歯列矯正にかかる時間を、最大で1年ほど短縮することが可能です。手術にかかる時間は約1~2時間で、次のような手順で行われます。

<コルチコトミー手術の手順>
1. 局所麻酔をかけ、歯茎に切開線を入れる
2. 歯肉をはがして歯槽骨を露出させた後、タービンで歯槽骨に溝を入れる
3. 歯肉を元に戻して縫い合わせ、感染予防処置を行う
4. 約1週間後に抜糸する

歯列矯正の方法は医師と相談して決めましょう

歯列矯正は時間がかかるものですが、ここに紹介したような方法を採ることで、治療期間を短縮することはできます。
ただし、歯科医院によっては扱っていない治療法もあります。治療を受ける際には、事前に必ず歯科医院に問い合わせ、医師とよく相談してください。


  • コラムに掲載されている施術などは、必ずしも当院でご提供してるサービスに限りませんので、ご了承ください。